「未来の二つの顔」J・P・ホーガン原作 星野 之宣(講談社漫画文庫)
2004年 10月 08日
2028年の月面、静かの海。月からの鉱物資源の採掘は、コンピューターシステム・タイタンによって円滑に行われ、そのシステムは人類の未来に大きな期待が寄せられるものだった。
しかし、1つの簡単な命令が、統治者である人の生命を脅かす危険な作業を選択し、人類はコンピューターのトラブルと解釈。完全に孤立した宇宙コロニーを選び、人類は「知恵」を持ったコンピューターシステムと人類の関係の未来をシミュレートする一大演習を実施するのだが・・・。
原作は、ハードSFの雄ホーガン。
十年以上も前に書かれながら、まったく古さを感じさせない。そのすばらしい話を、まさにこの人しかいないという星野宣之がビジュアライズした。
原作とコミックの、こんなにも幸福な出会いを俺は今まで見たことがない。
さて、人工知能やロボットと人間の関係を描いたSFは星の数ほどあるのだが、その大半は次の2パターンかその組み合わせである。
・効率や能率を第一義にした機械としてのロボットや知能(全体主義とか非情な組織なんかの暗喩が多い)と人間の関係を描いて、人間の「心」にスポットを当てる。
・ロボットや知能を、「嘘をつかない」「自己犠牲」という側面から捉え、「究極の善人」として人と対比して描いて、人間の心にスポットを当てる。
ところが、この物語は違う。知能が、自分の生まれてきた目的や、自分を生み出した存在「人間」を"認識"するということがテーマになっている。独創的である。
読み始めたらもうやめられない。ロジカルでなおかつスリルとサスペンスに満ちたストーリー。
まさに、本格SFはかくあるべし。
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by hajime_kuri
| 2004-10-08 22:31
| SF