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「読書記録」を中心に、読んだ本、見た映画の記録、書評、ブックガイド、その他日常の徒然ね。


by hajime_kuri

電子書籍第4弾出版、「薔薇の刺青(タトゥー)」

あけましておめでとうございます。
Kindle本の第四弾を出版。
「薔薇の刺青(タトゥー)/自転車の夏」
です。

以下、あとがきの引用

「薔薇の刺青(タトゥー)」、執筆当時の思いで

 「薔薇の刺青(タトゥー)」は昭和六十年ごろに書いたものである。ちょうどフィリピンからの出稼ぎ女性が増え、社会問題になりはじめたころで、前年には長野県佐久市の公営プールで、フィリピンの風俗嬢からエイズが移るなどという噂が流れた事件があったりした。
 三流広告会社の営業だった私は、求人広告の取材などで夜の街に出入りしていて、こういった外国人女性を斡旋するプロダクションなどの実体も実際に目にしていた。一人称スタイルのハードボイルド小説を書いていた私は、コンテストに挑むにあたり、この社会問題を取り上げたわけである。
 当時は、広告業という軽佻浮薄な業界が肌に合い、週末の休日は、夏はダイビング、冬はスキーと、若い社員同士で遊びまくっていた。楽しい日常ではあったのだが、「小説を書く」という仲間がいなかったため、心の奥底ではいつも孤独感を感じていた。弾けていても、本当の自分ではないという感覚を自覚していた。
 その孤独感と、世間を斜に眺める醒めた視点が、作品に濃厚に反映されている。それが作品世界にぴったりとはまっているのだ。
 その後、私は小説修行仲間と出会い、妻と出会い、子供が産まれ、当時のような孤独感はなくなった。もう「薔薇の刺青(タトゥー)」のような作品は書けないと思う。
 作家の大沢在昌氏は、ハードボイルドミステリーとは、観察者(探偵)の孤独を描く作品だ、と語っている。けだし名言である。
 私にとっても「薔薇の刺青(タトゥー)」は愛着のある作品になった。この作品のリメイクを薦めてくれた友人に感謝している。

「自転車の夏」のころ

 この作品の主人公・栗本肇は、作者・栗林元の分身である。ただ、作者が4年間の大学時代に見聞した体験を、新入学生の四月から九月の半年に凝縮して描いている。
 まるで軍隊を思わせるような体育会に身をおいて、貴重な四年間を無駄にしたのではないか、その四年間にもっとやっておくべきことがあったのではないか、という疑念は、就職した後も私の心に重くのしかかっていた。
 当時の事を冷静に作品化できると思えたのは、ちょうど三十歳を過ぎたころだった。一ヶ月ほどで初校を書き終えた。書き終えて、「ああ、あの四年間、本当によかった」と思えたのだった。すべてに対してよかったと思えたのだ。
 かつての青春物語では、主人公はスポーツや文学で成長した。井上靖の「夏草冬濤」「冬の海」などがその最高峰だと思う。だが、昭和五十二年の主人公は、少林寺拳法とマンガで成長するのだった。七十年代の青春がここにあると思う。私にとっては、かつて文学雑誌が担っていた役割を、マンガ雑誌の「ガロ」が担っていたのだった。かつては、詩や小説や演劇などに向かっていた若者の表現欲求が、マンガに向かっていった時代、それが七十年代だった。
 そんな自分の青春時代を再発見・再評価する作業が、私にとっては「自転車の夏」を書くことだったのである。
 この作品は、母校の愛知大学と少林寺拳法部に感謝を込めて書いた作品だが、同時にマンガを描くことに情熱を傾けたことのあるすべての人に捧げる物語でもある。


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作者は小説を書いています。よろしければお読みください。(Kindle版です)

1988 獣の歌/他1編

神様の立候補/ヒーローで行こう!

盂蘭盆会●●●参り(うらぼんえふせじまいり)他2編


by hajime_kuri | 2015-01-04 02:10 | 俺の作品