井上靖の自伝的三部作
2004年 02月 24日
個人的にはビルドゥングスロマン(教養小説・成長物語)の最高峰だと思っている。
主人公洪作の湯が島での幼少期が「しろばんば」、沼津での中学時代が「夏草冬濤」、そして柔道に夢中の高校受験浪人中が「北の海」である。
「しろばんば」は教科書にも載っていたりしておなじみだろうが、高校生の時、なんで「しろばんば」なんだよ、と思ったものだ。中学生や高校生なら絶対に「夏草冬濤」や「北の海」の方が面白いし興味を抱くはずだからだ。
大事件が起こるわけでもなく、淡々と物語は進行するが、洪作を取り巻く友人達の生き生きとした姿が実に魅力だ。あの頃の学生達って本当にいい。その仲間達の中で、読者はもう一度、青春を体験するのだ。
私は、この作品群に魅了されて武道がやりたくなり、大学で少林寺拳法部へ入ったぐらい。で、酒飲んで寮歌を歌うようなアナクロな青春を送ってしまったわけだ(笑・1977年だからね)
作者・井上靖(当然、洪作のモデル)が練習した、第四高等学校(現金沢大学)の武術道場「無声堂」が、愛知県犬山市の明治村に移築保存されている。
自宅の近くなので、私は時々、そこで旧制高校の青春に思いを馳せてみるのである。
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しろばんば新潮文庫
夏草冬涛 (下)新潮文庫
北の海〈上〉新潮文庫
by hajime_kuri
| 2004-02-24 23:41
| 青春