「春の道標」(黒井千次)新潮文庫
2004年 02月 25日
恋愛もの、とか初恋ものといわれる小説には、極めて冷笑的な態度を取るひねくれ者の私が、さめざめと涙してしまった小説である。17歳の明史(あけし)と、通学路で出会った髪の長い美少女15歳の棗(なつめ)の1年間の出会いと別れを描いている。舞台は戦後すぐ、でもそんなことは関係ない、この物語には誰もが通過した「ささやかな初恋」と通じる普遍性があるからだ。
中学生の棗は春から明史の高校に通うことになっている。
「お友達になってくれる?」
「お友達?」
「さよならはできないもの…私たち」
「毎日会って、同じ学校に通って、お互いに好きで、そして丘には行けないで…お友達?」
「地獄だよ、そんなの」
「なれると思う…」
「……」
ここで俺は泣いてしまった。
丘とは、二人がそっと抱きしめ会った場所である。
これは、少年の、控えめな、ささやかな恋が、静かに終わりを迎える瞬間である。
最後のページを閉じたとき当時27歳だった俺は、17歳の時の心に戻り、流れる涙を止めることが出来なかった。作中の明史さえ涙を流していないのに。
実はそのとき、出勤前の朝方で、意外に早く目が覚めてしまった私は、高校教師の父の机上にあったこの本を手に取り、寝床の中で読んでいたのである。その深い感動を、少しでも長く噛みしめていたかったので、その日は仮病で会社を休んでしまいました(告白)。
この作品は、1981年度の読書感想文コンクールの課題図書になっているので、読んでいる人も多いかもしれない。それにしても俺のような読書ずれした野郎を泣かすとは、課題図書も侮れないではないか。
未読の方は、騙されたと思って読んでくれ。
春の道標新潮文庫←アマゾンへGO!
黄金の樹
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作者・栗林元は小説を書いています。よろしければお読みください。(Kindle版です)
1988 獣の歌/他1編・栗林元
神様の立候補/ヒーローで行こう!・栗林元
盂蘭盆会●●●参り(うらぼんえふせじまいり)他2編・栗林元薔薇の刺青(タトゥー)/自転車の夏・栗林元
中学生の棗は春から明史の高校に通うことになっている。
「お友達になってくれる?」
「お友達?」
「さよならはできないもの…私たち」
「毎日会って、同じ学校に通って、お互いに好きで、そして丘には行けないで…お友達?」
「地獄だよ、そんなの」
「なれると思う…」
「……」
ここで俺は泣いてしまった。
丘とは、二人がそっと抱きしめ会った場所である。
これは、少年の、控えめな、ささやかな恋が、静かに終わりを迎える瞬間である。
最後のページを閉じたとき当時27歳だった俺は、17歳の時の心に戻り、流れる涙を止めることが出来なかった。作中の明史さえ涙を流していないのに。
実はそのとき、出勤前の朝方で、意外に早く目が覚めてしまった私は、高校教師の父の机上にあったこの本を手に取り、寝床の中で読んでいたのである。その深い感動を、少しでも長く噛みしめていたかったので、その日は仮病で会社を休んでしまいました(告白)。
この作品は、1981年度の読書感想文コンクールの課題図書になっているので、読んでいる人も多いかもしれない。それにしても俺のような読書ずれした野郎を泣かすとは、課題図書も侮れないではないか。
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神様の立候補/ヒーローで行こう!・栗林元
盂蘭盆会●●●参り(うらぼんえふせじまいり)他2編・栗林元薔薇の刺青(タトゥー)/自転車の夏・栗林元
by hajime_kuri
| 2004-02-25 23:31
| 青春