「読書記録」を中心に、読んだ本、見た映画の記録、書評、ブックガイド、その他日常の徒然ね。


by hajime_kuri

「六番目の小夜子」(恩田陸・新潮文庫)

a0003784_104724.jpg「場の魔力、場の魅力」

私たちの高校には伝説がある。
三年に一度、卒業生から在校生に継承される「サヨコ」の役。
サヨコには義務がある。サヨコをつとめる者はだれにもそれを悟られてはならない。その年の文化祭での全体講演の劇「サヨコ」のシナリオを書かねばならない。サヨコを勤めることを承諾した印に、一学期の始業式にクラスに赤い花を飾ること。
サヨコが無事に勤められた年は、学校にとってよいことがある。逆に失敗した年はよくないことが起きる。
そして、今年は六番目のサヨコの年でした。

どうです、この設定でもう私はKOされた。「やられた」と思った。読まずにはいられない。
さらに、この年のサヨコは「二人いた」のだ。
校内に伝わる「サヨコ伝説」はなぜ始まったのか?
なぜ続いているのか?

伝説が途絶えようとした年もあった。しかし、それを補強し伝説の継承を助けただれか、何かがいたのでは?私(読者、ちなみに43歳男)は、伝説の謎を追いかける高校生達と一緒に、あの頃に戻っていた。この物語のいとおしさは、帰らぬあの時代の思い出に物語を重ねてしまう私の世代には特に効く。読み進むうち、舞台の教室・廊下・校舎が自分の母校になり、登場人物は同じクラスの連中になった。(ひょっとすると、スティーブン・キングのハイスクールものホラーを読むアメリカのおじさんおばさんもこんな感覚を味わっているのかもしれないなあ)
学校という閉ざされた装置を舞台に、テイストはホラーなれど、作者が描く(しかも上品に、今時なんと貴重なことだろう)のは輝ける「17歳」たちの恋と冒険だ。
だが本当の主人公は作者の筆で緻密に描写される学校という、いわば「時の流れの止まった場」だ。この「場の持つ魔力」こそが、この物語の主題なのであろう。
このテーマは、学校から故郷に装置を移して恩田陸の続く「球形の季節」でさらに鮮明な形を取る。
これもおすすめだ。
恩田女史自らが脚本化を手がけたNHKドラマ「六番目の小夜子」(DVD発売中)も必見だ。微妙に登場人物が変えてある。しかも、美少女てんこもり(笑)

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※この記事は、私の別ページ「1行ブックガイド」「デジタル文芸」から転載したものです。

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作者・栗林元は小説を書いています。よろしければお読みください。(Kindle版です)

1988 獣の歌/他1編・栗林元

神様の立候補/ヒーローで行こう!・栗林元

盂蘭盆会●●●参り(うらぼんえふせじまいり)他2編・栗林元

薔薇の刺青(タトゥー)/自転車の夏・栗林元
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Commented by bhaus at 2004-06-17 17:18
これ、放送されているものを先に見ました。かなりクオリティの高いドラマで「さすがはNHK」と思ったものです。原作を読むのもいいなあ、と思いつつ、DVDを買おうかなあ、などとも思ってしまったり。
Commented by qsso at 2004-06-17 19:28
今日は帰ってきて
ちょっとダンベルとシットアップ。
ふぅまだ汗が出る……
ちょっと最近は鍛えまくり

ムカシ、このドラマ、ムスメとリアルタイムで見たなぁ
そのムスメも今年、高三……ですが
ときの流れは早いにゃぁ
そうそう「なぞの転校生」も見たヨ
Commented by hajime_kuri at 2004-06-17 22:00
NHKのドラマ愛の詩シリーズですね。
サヨコに出ている栗山千明がうちの娘に似ているので印象的でした。
ちなみに、読書記録゛からリンクしている「1001sec.com」のアーチストmurboさんが、「幻のペンフレンド」と「天使みたい」のCGと特撮部分のお手伝いしています。
by hajime_kuri | 2004-06-17 10:48 | ホラー | Comments(3)