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「読書記録」を中心に、読んだ本、見た映画の記録、書評、ブックガイド、その他日常の徒然ね。


by hajime_kuri

「霊感・霊能の心理学」(中村希明)朝日文庫 93年


 ホラー小説、ホラー映画マニアである私は、心霊現象や怪奇現象も嫌いではない。ただ、さすがにすべてを本気で怖がり、信じるほど若くはなくなった。その一因となったのが、本書をはじめとする心理学や精神病理学の本を読んだことである。
 人間は、どんなに科学が発展しても、それに応じてさらに未知なもの神秘的なことを求めてやまないのだと思う。
 かつて、神や悪魔を信じていた人々は、科学が発展するにつれて、今度は宇宙人や超能力や未確認生物など、科学的(に見える)な神秘を求めていく。以前読んだ本で、神秘事件発生のパーセンテージは不変である、というのを知った。
 18世紀以前、悪魔や幽霊や狐や狸が原因という目撃事件が主である。が20世紀になると、その手の事件は激減して、変わりにUFOなどが登場する。つまり、人間は必ず、一定のパーセンテージで、そういうものを見る(見たような気になる)ものなのである。まったく身も蓋もありませんね(笑)。
 本書の中でも白眉なのは「名作の精神病理学」で、四谷怪談を分析するところ。伊右衛門の幻覚はまさに「錯視」という症状そのもので、そんな知識など無かったであろうに、それを演出として用いた南北の洞察力はすごい。
 といった具合に、現実の心霊や霊感を大槻教授よりずっとスマートに切っていく。そのうちに、そういった現象を頻繁に感じる現代社会の病理的な部分も見えてくる、という本である。
 壺とか買っちゃいそうな人は是非読んでおくといいよ。
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by hajime_kuri | 2004-03-07 22:38 | 自然科学