「読書記録」を中心に、読んだ本、見た映画の記録、書評、ブックガイド、その他日常の徒然ね。


by hajime_kuri

「幻象機械」(山田 正紀)と「幻詩狩り」(川又千秋)中公文庫

a0003784_91439.jpg「幻象機械」(山田 正紀)
日本人に特異的な右脳と左脳の機能差がある。言語脳(左脳)、非言語脳(右脳)の機能分担が、西欧人ほど厳密ではないのだ。例えばコウロギの鳴き声を左脳で聞く。そして秋の情感を感じる。一方、西欧人はこれを右脳で聞き、単なるノイズとして処理する。
日本文化のワビサビなどは、日本人の脳機能の特殊さが生み出したものなのだ。
その研究から、無中枢コンピュータを構想する大学助手谷口が父の遺品に石川啄木の未発表小説を発見したとき、我々日本人の脳に刻印されていた禁忌の謎が次第に明らかに…。日本人の"正体"に気づいてしまった啄木の、そして彼の運命は。
山田正紀的なアプローチの作品である。啄木の未発表小説と谷口の物語が交互に繰り返される。虚構内虚構を楽しむ構成で、これは当時活字や映画や演劇などで大いに流行った手法である。この物語では幻象機械は「イリュージョンプロジェクター」と呼ばれている。
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「幻詩狩り」(川又 千秋) 中公文庫
1984、日本SF大賞を受賞した作品である。
1948年、パリ。シュルレアリスムの旗手、アンドレ・ブルトンは、一人の詩人を待っていた。フー・メイという名の詩人は、かつてその作品でブルトンに衝撃を与えた。彼は、言葉によってブルトンの眼前に「異界」を現出させ、また「鏡」を作り上げて見せたのだ。フー・メイ最後の作品「時の黄金」は、シュルレアリストたちの間に静かに広がっていき、彼らを次々と破局へ導く。時をへて日本の出版社が「時の黄金」を再発見する。そして・・・。
言語SFの傑作である。当初は、より正確に事実を伝えるための手段であった原始の「言葉」が、やがて世界を記述するのではなく世界を作り上げ変貌させていくのである。個人的には「SFってここまでやれるのか」と感銘した作品である。
「言葉」により、人間は、数や名前から、より複雑で抽象的な概念や情緒を考え伝えることができるようになった。私見ではあるが、人類最古の発明品である「言語」は、色も形も質量もないが、ある意味「幻象機械」なのではないだろうか。
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1988 獣の歌/他1編・栗林元

神様の立候補/ヒーローで行こう!・栗林元

盂蘭盆会●●●参り(うらぼんえふせじまいり)他2編・栗林元

薔薇の刺青(タトゥー)/自転車の夏・栗林元
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Commented by bhaus at 2004-07-04 14:38
面白そうです。古本屋で探してみるかな。
Commented by qsso at 2004-07-07 07:01
ホンマに…はまりそうです~
by hajime_kuri | 2004-07-04 09:15 | SF | Comments(2)