「読書記録」を中心に、読んだ本、見た映画の記録、書評、ブックガイド、その他日常の徒然ね。


by hajime_kuri

海景酒店―Hotel harbour‐view (Action comics)



‘82~85年に雑誌掲載された作品を集めた一冊。関川 夏央, 谷口 ジローの完璧なコンビが印象的な作品を連発していた時期である。
同じコンビの「新・事件屋家業」が、ユーモアやペーソスを含んだライトなハードボイルドだとすると、この「海景酒店―Hotel harbour‐view」は、そういった遊びの一切無い、本当にハードボイルド(しかもスタイリッシュ)な作品ばかりである。
二人があえて挑んだ実験作が「グッドラックシティ」。縦長のコマを続けていき、日本式のBD(バンドデシネ・仏のコミック形式で、こちらはシネラマ比率に近い横長のコマ)を意図したのかもしれない。
その他の作品は、男と女の殺し屋を狂言回しにした短編である。
この時期の谷口ジローの絵は、個人的に大好きなタッチだ。
マンガ作品の中には、ストーリーはいいけど絵が合わない、と感じる作品がある。マンガ家自身もそういうことを感じるらしく、近年では、自分で描く一方、他の漫画家の原作に回ったりする人もいる。
谷口ジローの作品は、その絵の魅力がストーリーを裏切らない、むしろ逆に「手垢の付いたような男と女のストーリー」が、谷口ジローの絵にかかると魔法のように艶を帯び光を放つのだ。
この作品集の中ではアラン・ソーモン原作の「東京式殺人」がタッチとして少し異色である。コントラストがくっきりしていて、今で言えばフランク・ミラー的。「ヘビーメタル」や「1984」といったアメコミ・BD(バンド・デシネ)系の雑誌に親しんでいた俺は、当時、こりゃ「ヘビーメタル(仏誌メタル・ユルランの英語圏版)」に掲載されていても違和感無いなあ、なんて思ったものだ。

※70年代後半は、風忍(ダイナミック・プロ)などが「ヘビーメタル」に作品を発表したりして、日本のマンガ家作品が海外へ出て行く最初の時代だった。また、メビウス、リチャード・コーベン、アレックス・ニーニョなどの海外のアーチストのイラストやコミックが日本でも紹介された時代で、そんなタッチに刺激を受けた意欲的な日本の若手漫画家が次々と出てきた時代である。(板橋しゅうほう、大友克弘、ひさうちみちお、荒木 飛呂彦など)

この後、谷口ジローは本当に「メタルユルラン」に作品を寄せたりして、現在フランスでも人気が高い。ペン・ネームの元になったジャン・ジロー(メビウス)と一緒に作品を作ったりもした。なんだか、このソーモンというのは、谷口ジローをヨーロッパへ紹介しようとした関口夏央本人ではないかと想像する。「東京式殺人」はそんな狙いの作品だったのかもしれない。

海景酒店―Hotel harbour‐view (Action comics)

※マンガ原作などを夢見ていた当時、谷口ジローの絵は、初期の平野仁の絵と並んで、俺の憧れでした。

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Commented by M.Nishiwaki at 2009-04-21 00:49 x
お久しぶり。確かに海景酒店のほうが読者を選ぶ作品でしたね。事件屋稼業もよかったけれど、シリーズ最後の方は、男の友情が少々、安手になって鼻につくようになったのが残念です。
それにしても、関川谷口は最強だったなぁ。
Commented by hajime_kuri at 2009-04-21 09:51
どうもおひさしぶりです。「事件屋」の方は、あの歯科医のおばちゃんがキャラ的には好きです。あの時代、いつもいらだっている若造だったけど、ある意味面白かったなあ。
by hajime_kuri | 2009-04-19 09:23 | コミックス | Comments(2)