「読書記録」を中心に、読んだ本、見た映画の記録、書評、ブックガイド、その他日常の徒然ね。


by hajime_kuri

カテゴリ:映画( 67 )

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 先日機会があってこの映画を見た。是枝作品は「誰も知らない」が印象深く、以前このBLOGでも記事化した。
 「海よりもまだ深く」は2016年5月公開の作品である。
 映画は、団地のアパートの一室で亡き父の会葬御礼を書いている長女(小林聡美)と老母(樹木希林)の会話から始まる。亡父が書の達筆な文化人風ではあるが生活力のない困った人だったことが語られる。
 そこへ長女と入れ違いにやってくる息子の良太(阿部寛)。島尾敏雄文学賞(架空の賞)を受賞した後、泣かず飛ばずの純文学作家である。小説のネタ探しと賞して現在は興信所の調査員をやっているが、離婚した妻に払う養育費にも事欠く有様だ。
 元妻(真木よう子)への未練捨てがたい良太。ギャンブル好きで調査費用をかすめて競輪にうつつを抜かす良太を後輩調査員の町田は慕っている。息子への愛情を忘れない良太に「父」を見ているのかもしれない。良太の「父」としての映画なのだが、町田は「息子」としての目線を担っているのかもしれない。父を知らずに育ったのかもと思わせる。
 月に一度の息子との日曜日に、家族は再びアパートの老母の元で一泊する。
 ばらばらになった家族を危ういところで緩やかにつなぎ止めている老母の存在の大きさを、樹木希林の押さえた演技が静かに伝えてくる。真木よう子の苦労を一番知っているのは、同じような男と夫婦になった樹木希林だからである。これを自覚している老母のいかに少ないことか。
 なりたかった大人になれなかった大人たちが、それでも折り合いをつけて人生を生きていく。
 映画は、台風がくる予報で始まり、台風一過の晴天の朝で幕を閉じる。危ういバランスをとりながら、それでも家族は生きていくのだと思わせてくれる。佳品である。
 阿部寛演じるところの篠田良太の造形に思わず苦笑。
 マイナーな文学賞を受賞した後、鳴かず飛ばずのまま50代になり、小説の取材と称して探偵業で糊口をしのぐが、子供の養育費にも四苦八苦。
 これが、テレビドラマの原作募集で佳作入選した後、鳴かず飛ばずで50代になり、小説のネタ探しだと自分に言い聞かせて苦情電話対応業で糊口をしのぐが、国保と年金の支払いにも四苦八苦、という俺自身の境遇とかぶりすぎていて、鏡に映った自分を見るがごとし。洒落になりません(苦笑)
 でも、そんな自分の人生を、「これもありだ」と思えるようになるのが大人なのであろう。俺も大人になったなあと思う。

薔薇の刺青(タトゥー)/自転車の夏・栗林元
小説指南・栗林元
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by hajime_kuri | 2017-06-27 17:25 | 映画 | Comments(0)
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「モンスターズ 新種襲来」
ギャレス・エドワーズの前作「モンスターズ 地球外生命体」の続編であるが、ストーリー的には関係はない。
前作同様、地球外の巨大生物が跋扈する世界状況を背景にしているだけで、物語は静かで象徴的である。
「怪物」を退治するためにアメリカ軍は空爆を行っているが、巻き添えになる市民も少なくなく、抵抗する反米武装勢力との戦争が続いている。
主人公の新兵は、歴戦の鬼軍曹に率いられた部隊の一員として、行方不明の四人の兵の捜索のため危険地帯へ行くことになる。
まるで、「プライベート・ライアン」を思わせるストーリーだが、カタルシスはない。
兵は次々と死んでいくが、この映画の中で、怪獣に殺される人間は一人も出てこない。全員、人間同士の戦闘で死んでいくのだ。
怪獣は、そんな人間には全く無頓着に深海生物のような優雅な動きで通り過ぎていくだけだ。
この映画の「怪獣」とは、まさに「恐怖」と「疑心暗鬼」でテロとの戦いをせざるを得ない「人間の業」のメタファになっている。
テロとの戦いのまさに推進役のアメリカが、現状に対するやるせなさや絶望感を映画で表現するならば、まさにこのような表現しかないのであろうと思った。
ただ、そういった感受性のない観客にとっては、カタルシスのねえ「つまんない怪獣映画」でしかないと思う。
だからこそ、この作品、俺にとっては大傑作である。


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by hajime_kuri | 2016-08-16 18:49 | 映画 | Comments(0)
噂には聞いていたが、ようやく鑑賞した。
この作品、実に俺好み。


アマゾンの紹介
カメラ8万円、ライト750円、平均スタッフ数3.5人…。町のビデオ屋が作ったヒーロー映画の金字塔!?
京都市伏見区で結婚式や幼稚園のビデオ撮影業を営む安田監督が、8万円のカメラと平均3.5人のスタッフで作り上げた関西発ヒーロー映画。

ということだが、脚本がしっかりしてる。キャラクター造形にもストーリー展開に合わせたご都合主義などがなく、何より見ていて主人公に感情移入してしまう。うまい!
役者もいいなあ。

楽しい時間を過ごせたよ。DVD、買って悔いなしだな。こんなに手放しでほめる映画は珍しい。

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by hajime_kuri | 2016-03-26 01:41 | 映画 | Comments(0)

台風19号のおかげで完全オフの1日になったので、ハードボイルド好きの方から借りたDVDで一人自宅ロードショー。映画はロマン・ポランスキー監督の「チャイナタウン」だ。
当時高校2年生の私は、まさに「キネマ旬報」を買い始めたばかりの映画少年だったが、この映画は見る機会のないままだったわけね。
白黒時代のフィルムノワールをよく再現していて、とってもおしゃれ。タイトルロールのタイポグラフィーや、けだるいテーマ音楽で、一気にハードボイルドな気分になる。
ジャック・ニコルソンいいわ。独特の色気がある。また、悪役のジョン・ヒューストン、役者としてもいいなあ。

ちょうど今、昔書いたハードボイルドミステリーをリメイク中(kindleで公開予定、乞うご期待)なので、この気分のまま原稿書きに戻ります。はかどりそうですわい。

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by hajime_kuri | 2014-10-13 10:27 | 映画 | Comments(0)

風立ちぬ



宮崎監督の「風立ちぬ」を見た。
皮肉屋で、性格の悪い私は、作品の出来次第によっては、次のように感想を書こうと思っていた。

無類の飛行機好きの宮崎氏が、零戦設計者の堀越次郎氏をアニメで描きたい気持ちはよくわかる。彼のエピソードは、戦中の軍需産業が、戦後の日本が「ものづくり」で復興していく為の技術基盤としても機能したという側面からもよく語られる話で、日本人のクラフトマンシップと戦争との関わりはドラマとしても面白いと思う。
しかし、そこになぜ堀辰雄?
戦後の平和教育を受けてきた宮崎氏は、太平洋戦争に協力したと見なされる零戦設計者の堀越氏を主人公にすることに「後ろめたさ」を感じたのではないか。反戦運動家、護憲団体、教育関係者などから、「戦争を美化した」と見当はずれの非難を受けるのを恐れたのではないか。
「僕は飛行機オタクですが、戦争には反対していますよ」
この「戦争には反対していますよ」の為に堀辰雄を持ってきたとしたら、堀辰雄に失礼だ。そんな言い訳を必要として語られる堀越次郎にも失礼だ。

そんな予断まみれの、不純な気持ちでこの作品を見たのだが、私の予想はいい意味で裏切られた。
確かに、この作品に堀辰雄を持ってくる理由は、宮崎監督の免罪符のようなものだろうという思いは変わらない。ただ、作品の出来として、堀越次郎と堀辰雄は「水と油」であったかというとそうではないのだ。
宮崎氏は、言い訳として堀辰雄を持ってきた後、悩みに悩んだ構想の過程で、「戦争に翻弄されたまじめな技術者の、仕事と恋」を通して、あの時代、「まじめに一生懸命生きた昭和の日本の青年」を描くことに決めたのだろう。この段階で、この作品は「普遍性」を勝ち得たのだ。
以前、このブログでも触れたが、捕虜生活での日本軍に対する恨みから書かれたピエール・ブールの「猿の惑星」が、白人文明の奢りや人間社会の戯画化などの考察で昇華されて普遍性を勝ち得たようなものである。

私は宮崎氏の息子の世代になる。私の父も軍国少年から、一気に敗戦国の少年になり、国に絶望した世代だ。戦中、戦争に口をつぐんでいた知識人たちが、獄中で戦争反対を叫んでいた運動家(たとえそれが無政府主義者やテロリストであるとも)を自分たちの小説や評論の中で英雄視することを、自分たちの免罪符のようにして作品を発表し続けた戦後という時代。
それらの作品を浴びるようにして育ってきた宮崎氏、そして私。

今や巨匠というべき宮崎氏でさえ、作品作りに当たって、左翼に対する言い訳が必要だと思ってしまう日本という国。私が意地悪な疑問を投げるべき相手は、宮崎氏ではなく、言論界にはびこる、頑迷固陋な日本のリベラル派かもしれない。

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戦争と技術者と日本の戦後の産業に関しては、次の書作も非常に興味深いです。
ジェットエンジンに取り憑かれた男 (講談社文庫)


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by hajime_kuri | 2014-08-25 23:30 | 映画 | Comments(0)
話題の映画なので感想を書こうと思う。昔からのゴジラファンとして、この映画は非常によかった。
敵役の昆虫型怪獣は、エネルギーをむさぼって繁殖しようとする、うがった見方をすれば、繁栄のためにエネルギーをむさぼる人類の欲望のメタファーみたいなやつで、それに人類が翻弄される。
本能で、この怪獣と戦うゴジラは、もう台風やハリケーンのように人類には制御不能の存在で、ゴジラ自身、人類なんて歯牙にもかけない。敵の怪獣を倒すために、都市を破壊しまくるんだけど、台風に腹を立てる人間なんていないよな(苦笑)。
ラストシーン、敵を倒したゴジラが、台風一過のような青空に向かって勝利の雄たけびを上げて海へ帰って行くんだけど、いや、その姿の神々しいことよ。
まさに、荒ぶる守護神だ。
造形にも、それは現れている。トラやライオンのような肉食獣や、ワシや鷹のような猛禽類は、その容姿に気高さをまとっている。今回、ハリウッドのクリエーターたちは、ゴジラにそういったイメージを与えたのだと思う。
大自然を征服しそれを御してやる、という欧米的な思考はこの作品にはもうない。むしろ、自然を畏れ敬う非常に日本的な自然観である。311以降だからだろうな。
日本人のファンも、この作品を見た後は、従来のような「ゴジラ」作品にはもう戻れないだろうな。日本の昭和の特撮にあるような、「子供だまし」や、言い訳めいた「政治的メッセージ」が一切ないのも好感度高し。




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by hajime_kuri | 2014-08-04 20:11 | 映画 | Comments(0)

昭和33年生まれの私は、怪獣映画とともに育った世代と言って間違いない。
怪獣映画はイマジネーションを掻き立てる映画で、想像力を刺激する映画であるが、同時に想像力の助けが必要な映画でもある。
怪獣の尾や戦闘機を操演するピアノ線は見えないつもりになり、スローモーションの海や湖のシーンでは、巨大な水滴を、水しぶきと思い込む。そういった助けが必要なのであった。
昨今のCGの進歩で、この「パシフィック・リム」では、そのような想像力の助けは、全く必要なくなっている。
水や炎や煙など、すべて演算処理でリアルにリアルに表現できるのだ。それを誇るかのごとく、この映画では雨が降っているシーンや海上での怪獣と巨大ロボットとの戦いが描かれる。
こういった映像こそ最新だが、映画の隅々にデルトロ監督の日本のロボットアニメや怪獣映画への愛情が滲んでいる。
菊池凛子演じるヒロインは明らかに公安9課の草薙素子(攻殻機動隊)だし、巨大ロボットイエーガーが大気圏に突入したり(1stガンダム)、主人公たちが何らかのトラウマを抱えていて、物語を通じてそれを克服していくという、日本アニメの常道を守っている。自己犠牲のシーンなどは、思わず芹沢博士(ゴジラ)かよと思った次第。
こういったリアルな怪獣映画が見たいという長年の夢がかなったのだが、想像力の助けの要らない特撮映画に一抹の寂しさを感じるのは俺が年を食ったせいだろうか。
「いや、やっぱりサンダ対ガイラの、山岳地帯で展開する陸上自衛隊のメーザー殺獣光線での攻撃シーンで、森の木々が光線でなぎ倒されるシーンの見事さといったらないぜ」という怪獣映画ファンたちの会話は、あたかも「東海道四谷怪談の隠亡堀の場(おんぼうぼりのば)の戸板返しの見事さと言ったらないぜ」という歌舞伎ファンの会話となんと似ていることか。
そうだ、考えてみると、ミニチュアワークで描かれた特撮は、もうその職人仕事を愛でる古典芸能になったのであろう。
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by hajime_kuri | 2013-12-15 22:44 | 映画 | Comments(0)

旅先で映画のロケに遭遇

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霧ヶ峰のビーナスラインを走っているときに、グライダーの滑空場に軍用車両らしき影発見。
光学ズームで拡大して撮影したものがこの写真である。
撮影はしなかったが、実物大のゼロ戦らしき影もあり。
映画のロケであろうと思った。
帰宅後、ネットで調べたところ、東映の正月映画「連合艦隊司令長官 山本五十六」のロケと判明した。

6月30日には、私の地元の明治村で、昭和14年の日比谷を再現してロケがあるらしい。
ちなみに山本五十六は役所工事さんとのことである。
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by hajime_kuri | 2011-06-20 22:58 | 映画 | Comments(2)


先日、DVDで「ゾンビ映画」の二本立てを楽しんだ(自宅で)。
作品は、ジョージ・A・ロメロ監督の「サバイバル・オブ・ザ・デッド」とルーベン・フライシャー監督の「ゾンビ・ランド」である。

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by hajime_kuri | 2011-02-12 00:15 | 映画 | Comments(0)


観た。「ビッグ・バクズ・パニック」
巨大化した昆虫が人類を襲う、もうB級間違いなし、レンタルで借りて大後悔という気分の横溢した作品だけど、これ実は大正解。
こんなに、にやりと微苦笑しながら、最後にはうんうんなんて言える作品は、「ショーン・オブ・ザ・デッド」以来だ。
何より、パニック物のスタイルを借りながら、それ自体をパロデイ化するインテリジェンスとユーモア感覚。しかも、視覚効果では力を抜いたわけではなく一流だ。
キャラも秀逸。愛すべきやつらばかり。
レンタルで借りて正解だし。何度も見かえす笑いもあり。
一見の価値あり。

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by hajime_kuri | 2010-07-03 23:13 | 映画 | Comments(3)