「読書記録」を中心に、読んだ本、見た映画の記録、書評、ブックガイド、その他日常の徒然ね。


by hajime_kuri

カテゴリ:ミステリ( 18 )

リアルな迫力を持った心理描写。


この作品集は、いずれも「死」をきっかけとする主人公の心に焦点を当てた作品が集められている。
表題作の「今度、死ぬことになった」は、タイトルだけで読者の気持ちを掴んでしまい、無理矢理最後まで読み切らせてしまうという、一種力業(ちからわざ)の異色作だ。
感心したのは「ついさっき、人を殺してしまいました」である。同じようなキャッチーなタイトルだが、これはリアルだ。
殺人を犯した主人公が、ツイッターにつぶやいた「つぶやき」だけで描写された作品である。ノイローゼになった主人公が、その原因となった上司を殺すまでの心情を吐露する「つぶやき」のリアルなことよ。
うつで会社を退職した俺には、そのリアリティーの迫力に感心した。
「つぶやき」だけで作品を成立させるという自己に課した制約を軽々と越えてみせる作者の並々ならぬ力量に感心せざるを得ない。
「ラフター」は、PCの中のAIとの対話だけで小説を成立させた、これも実験作である。
たとえ実験作でも、ぐいぐいと読ませる作品にして提示してみせるとは、心憎いなあと感心した。
今度、死ぬことになった 弾射音短編集 ミステリ編

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作者は小説を書いています。よろしければお読みください。(Kindle版です)

1988 獣の歌/他1編

神様の立候補/ヒーローで行こう!
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by hajime_kuri | 2014-08-21 23:02 | ミステリ | Comments(0)

ドラゴンタトゥーの女


遅ればせながら見ましたよ。この映画。
ミステリとしてもよくできている。
画面のカット割りがいいテンポで、人によっては少し舌足らずに感じるかもしれないが、俺的には、これぐらいの早いカットがいいテンポ。今の映画はこうなんだろうね。
それでも人物造型とかしっかり伝わってくるのは、フィンチゃー節ってとこか。
旧家の一族の40年前の謎を解くという、横溝っぽいところが面白い。
しかし、このちょいと心を病んだ女調査員リスペットの何てファッショナブルでカッコイイことよ。惚れましたよ。
ラストもちょっとホロリと来たね。これはぜひとも原作読まなければと思いましたよ。
また、登場人物がMacのノートPC(エアってやつ?) を使っているんだけど、少し欲しくなりました、苦笑。
タイトルバックも秀逸。

ドラゴン・タトゥーの女 [Blu-ray]

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)


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by hajime_kuri | 2012-11-23 15:55 | ミステリ | Comments(0)


高田崇史のQEDシリーズである。
諏訪地方で七年に一度執り行われる奇祭「御柱祭り」、千二百年続く「御頭祭」、この二つの祭りの起源や謎を探りながら、同時に連続殺人事件の謎を解くという仕掛けのミステリーである。とはいえ、このシリーズの常で、むしろ歴史の謎を解いていく方が重点で、そちらだけで十分おもしろい。もともと諏訪地方は、縄文の臭いを色濃く残す歴史の町だが、個人的に、ここ二十年以上毎年数回訪れている町なので、「そうそう、そうだよな」とか、「ここはまだ行ってないよ」という体験と併せて実に楽しく読んだ。
たまたま、自分の娘と諏訪大社とミシャグジ信仰の関係を調べていたところなのでいいタイミングで出会えた本である。
しかし、毎度のことながら、このシリーズの登場人物たちは、事あるごとに酒を飲み、温泉に入り、史跡を歩く。うらやましい身分であるよ。
QED 諏訪の神霊 (講談社ノベルス)

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作者・栗林元は小説を書いています。よろしければお読みください。(Kindle版です)

1988 獣の歌/他1編・栗林元

神様の立候補/ヒーローで行こう!・栗林元

盂蘭盆会●●●参り(うらぼんえふせじまいり)他2編・栗林元

薔薇の刺青(タトゥー)/自転車の夏・栗林元
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by hajime_kuri | 2011-07-15 15:38 | ミステリ | Comments(0)

個人的にすごくツボにはまったシリーズ。喪中なので初詣などには行けなかったのだが、代わりに年末年始は、このシリーズで楽しく充実した読書生活を過ごした。八年前からスタートしているシリーズで、やはり年をとるとこういう本との出会いにはタイムラグが生じるものだ(嘆息)

実はこのシリーズで初めて読んだのが二冊目の「触身仏」。一読して、民族学とミステリーのかねあいが、マンガ「妖怪ハンター」(諸星大二郎)とか「宗像教授シリーズ」(星野宣之)ぽくて、すごく俺好み。急いでアマゾンで残りの「凶笑面」と「写楽・考」を取り寄せたわけだ。
そしたら、第一巻の冒頭に、諸星大二郎先生の「妖怪ハンター」に捧ぐ、と(笑)。
だって蓮丈那智の雰囲気、女性の稗田礼二郎なんだもの・・・。
助教授の蓮丈と助手の内藤君の関係がなかなかユーモラスで楽しい。オカルティックな部分はなく、民族学的な謎と現在の事件との謎が相似形に解決していく物語構成で、内容的には「妖怪ハンター」より、「宗像教授」に近い。古代製鉄民族の話題も出てくるし。このシリーズには、スピンアウトした、骨董業界の闇を描いた「狐」シリーズがある。これも面白い。おすすめだ。

凶笑面―蓮丈那智フィールドファイル〈1〉 (新潮文庫)
触身仏―蓮丈那智フィールドファイル〈2〉 (新潮文庫)
写楽・考―蓮丈那智フィールドファイル〈3〉 (新潮文庫)
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by hajime_kuri | 2010-01-11 14:59 | ミステリ | Comments(0)

「東京島」桐野夏生



第四十四回谷崎潤一郎賞を受賞した傑作である。
いやもう一読するや、風呂もトイレもページから目を離せないというおもしろさである。
物語は漂流モノである。32人の人間がたどり着いた無人島。主な語り手は、唯一の女性・清子(すでに初老といってもよい四十台後半)。作者は女性だけに、女という性の逞しさを直視している。この作品の中で一番強い存在こそがこの清子だからである。
物語の登場人物や小道具には各種の暗喩も埋められていそうで、ストーリーの進行にも母系社会から父系社会への移行なども暗示されていたりする。
漂流モノというと「二年間の休暇」(いわゆる「十五少年漂流記」ね)と、それをネガティブに反転させた名作「蠅の王」(ゴールディング)があるが、この作品はどちらかとうと「蠅の王」寄り。スリリングでテンションが高い作品である。
以前、当ブログで同じく桐野作品「OUT」に言及した際にも書いた覚えがあるが、かつてブルーカラーの青年や、鬱屈した勤労者のために大藪春彦の作品があったのだが、今や鬱屈した女性のために桐野夏生の作品がある、といっても良さそうな気がする。本当に「男前」な作家であるよ。

東京島

蝿の王 (角川ホラー文庫)

二年間の休暇(上) (福音館文庫)

※リンクは別ウインドウで開きます。悪しからずご了承ください。

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by hajime_kuri | 2009-12-30 17:03 | ミステリ | Comments(0)
青空文庫からダウンロードして、iPhone3Gで文庫リーダー「豊平文庫」を利用して読了した。
この作品、かなりの長さで、実は昭和53年のハヤカワミステリを持っているのだが、あまりの難渋さに放り投げていた作品である。
新仮名遣いの青空文庫で読了したわけで、青空工作員の方とiPhoneには感謝感激である。
物語の内容の9割はペダントリイ(衒学)である。

「ペダントリイ(衒学)とは何ですか?」
「ペダントリイ(衒学)という言葉を使いたがることです」

という冗談があるほどで、文字通り、学問をひけらかして人を煙に巻くことである。
この作品では、これが舞台のムードつくりに利用されているのである。
どんな具合かと言うと、
「君がそう感じるのは、僻みだよ」と言えばよいところを、「君がそのような感を抱くのは、ニーチェが論じるところのルサンチマンが成せる技だよ」などということで、そういえば落語の「無学者」の中には、「今日は風が強くて、目に砂が入ってしまった」と言うところを、「今朝(こんちょう)は、怒風(どふう)烈しゅうして小砂眼入(しょうしゃがんにゅう)す」というところが出てきたなあと、今、思い出した。

そんな具合で、探偵・法水倫太郎が、得々と沙翁(シェークスピア)を引用している間にも殺人が起きてしまうわけで、まあ一度読んでみていただきたい奇書である。面白いよ。

この調子で、今度は夢野久作の「ドグラ・マグラ」をダウンロードしたところである。

黒死館殺人事件

日本探偵小説全集〈6〉小栗虫太郎集 (創元推理文庫)

黒死館殺人事件 (まんがで読破)


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by hajime_kuri | 2009-12-17 10:39 | ミステリ | Comments(4)

血液型性格判断の非科学性を証明せよ。これほど困難なことはないはずだ。これは「悪魔の証明」だからである。
あったことを証明するためには、「証拠を一つでも出せばよい」が、「無かったこと」を証明するための証拠は、やっぱり「無い」のである。
この物語は、血液型性格判断が差別にまで行き着いた近未来を想定して、この難題に挑む話である。そして、その難題に挑むのは、おなじみ松岡ワールドの、岬美由紀、嵯峨俊也、一ノ瀬恵梨香だ。といっても知らない人は知らないだろう。まあ、この千里眼・催眠シリーズは、はまった人だけのものだから無理強いしない。
二時間で読んでしまいました。
こういう手がありましたか、と。

ブラッドタイプ
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by hajime_kuri | 2007-07-31 12:52 | ミステリ | Comments(0)

ダイスをころがせ

a0003784_1817622.jpg俺が始めて読んだ真保 裕一は、「奪取」だった。一読、その面白さに驚愕して、次に読んだのが「ホワイトアウト」。以来、この作家の本は俺にとって、「たとえ明日のタバコ代に事欠くことになろうとも、本屋で見かけたら手にとってレジに行く」ものになっている。
この「ダイス~」は、舞台となるのが国政選挙。地盤も看板も鞄もない若者たちが、手作りの選挙で国政に挑む、というと、選挙の内幕を描いて、いわば情報小説のように事細かだったり、教条的に、だから日本の政治は、と嘆くのかと思ったら大間違い。
まずは、一票を入れることが、俺たち新人が勝つ方法だ、とばかりに、あらゆる(しかも正当な)方法での戦いが描かれる。
面白い。スリリングである。選挙が、こんなに冒険で、挑戦だったとは。
読み終わって、今まで投票を棄権していた人も、気になる候補に、まずは一票入れに行くか、という気にさせる。それこそが作者の狙いなのである。
オススメ。

ダイスをころがせ
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by hajime_kuri | 2005-05-24 18:19 | ミステリ | Comments(0)

「そのケータイはXXで」

a0003784_23465710.jpg
出張の往復の電車で読んだ。
旅行で訪れた山奥の温泉地。折しも怪しい祭りの当日。女子大生しよりと愛子を次々に襲う恐怖の事件。今すぐ脱出しなければ片目、片腕、片脚を奪われ、“生き神”として座敷牢に一生監禁されてしまうという!?頼りの武器はケータイのみ!二人は生きて逃げ出すことが出来るのか。というノンストップアクション小説。ハリウッドのB級ホラーのような話である。
冒頭、宿の押入から出てきた以前の宿泊者のものと思われる携帯電話が鳴り出すところが秀逸。文章にあらが目立つし、ストーリー展開も強引ではあるが、そのページターナー(次ページを繰らせる力)ぶりは見事である。
週末の夜更けに、コーヒーやおつまみを用意して、一気に読むという作品でしょう。
今後の精進が楽しみです。
宝島社文庫「そのケータイはX...宝島社文庫

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作者・栗林元は小説を書いています。よろしければお読みください。(Kindle版です)

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by hajime_kuri | 2005-02-02 23:47 | ミステリ | Comments(0)
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「ペルソナ」榊原史保美 双葉社
能舞台の跡地で発見された死体は、奇妙な面(おもて)をつけていたた。歴史の闇に葬られた幻の能、封印された宗教民画、失われた秘面。すべての謎が、滋賀県湖北の禁忌の里につながっていた。野望に憑かれた男たち、怨念に呑まれた女たち―かりそめの生を呪いながら輪廻を彷徨う幾多の魂に、果たして神は、仮面の下の真実の貌を顕すのか?壮大なドラマの中に人間存在の根源を描破する、気鋭渾身の書き下ろし長編。ということになっている。
なかなか楽しめる長編です。というか、ストーリーと登場人物の軽妙なセリフ回しに、ぐいぐいと引きつけられる。伝奇的な装いで、宗教のパワーゲームを描いた異色作だ。なにより、ダイナミックなストーリー展開が面白い。女性作家ならではだと思わせるのは、登場人物たちの愛憎関係。ちょっぴりホモセクシャル(それもすごくJune的な奴)。
会話がうまい作家だが、惜しむらくは、物語を登場人物の会話で説明しているところが、ままあること。ま、普通に読む分にはあまり気にならないけど。

「ペルソナ」榊原史保美 双葉社

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「カウンセラー」松岡圭祐 小学館
独自の音楽療法で高い評価を得ていた女性教諭の家族を惨劇が襲った。罰せられることのない犯罪少年に激しく憎悪を燃やすうち、彼女のなかに冷酷な「もうひとりの自分」が宿りはじめて…。臨床心理士・嵯峨敏也の活躍を描く。
これは感心した。岬美由紀のスーパーアクションではない松岡圭祐。イリュージョンと同じように、ありうる事件で現代を書いている。地に足がついている。そして、なにより嬉しいのは、憎しみからは何も生まれない。正義の名を借りても、憎しみからは憎しみしか生まれないということをしっかりと伝えてくれることだ。
いや、これは本当によかった。なにより面白いし。

「カウンセラー」松岡圭祐 小学館

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by hajime_kuri | 2005-01-26 00:14 | ミステリ | Comments(0)