「読書記録」を中心に、読んだ本、見た映画の記録、書評、ブックガイド、その他日常の徒然ね。


by hajime_kuri

カテゴリ:時代( 5 )



あまりの面白さに、3時間で一気読みした。
「イ(にんべん)」に「犬」と書いて「伏(ふせ)」。
伏とは、人の姿に生まれながらに犬の性(さが)と能力を持つ犬人間だ。
この物語は、伏を狩る道節と浜路の兄妹と、狩られる伏たちの追いつ追われつの物語である。
構造としては、いわば、日本の江戸を舞台とした「バンパイアとバンパイアハンターとの物語」的なもの。
つまらないわけがない。
この物語の中に、作中作品として、滝沢馬琴の息子・滝沢冥土の書きあげた「贋作・里見八犬伝」が挿入され、狩るものと狩られるものの物語の因果が語られる。
何よりの魅力は、主人公の少女・浜路や、伏の信乃ら犬人間たちのキャラクター造形だ。
まるで、アニメのようなノリの良さと思ったら、すでにアニメ化進行中だった(苦笑)。

欲を言えば、猟師の少女・浜路が使う猟銃がいかなるものなのかの描写が欲しかった。時代的には火縄銃なのだろうが、物語の中では、連射している描写もあり、そのあたりおろそかにできない読者もあろうと思うからだ。ただ、熟練兵士なら一分間に四発発射できたという(昭和末期の実験では18秒程度)というので、火縄銃でも連射でよいのかもしれない。

久しぶりにページを繰らせる力に満ちた作品を一気読みして、ちょっと満腹感を味わっているところである。
給料日直前だったけど、買って悔いなし。

伏 贋作・里見八犬伝

伏 鉄砲娘の捕物帳 Blu-ray
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by hajime_kuri | 2011-01-23 22:22 | 時代 | Comments(0)
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驚くべき事に、著者は外国人、ライザ・ダルビー女史。
これがまた、素晴らしく源氏の世界を描いている。
孫娘が発見した紫式部の回想記のスタイルで、彼女がいかに源氏の物語を書き始め、そしてそれが評判を呼んで中宮彰子のおそばに仕えるようになったかが描かれる。
一人の若い女性の宮中に対するあこがれから生まれた物語が、やがて、作者の成長と共に、当時の女性の恋愛観、人生観、恋する喜び苦しみをタペストリーのように織り込んだ大叙事詩へと変わっていく。
特に感心したのが、ライザさんの美的センス。
中宮に皇子が生まれ禁色となる描写。女官たちが白無垢の制約の中で、折り目や重ね合わせでそれぞれおしゃれをする。その白い着物と女官の黒い髪とのコントラストで、宮中が雪景色の朝のようになる。
このあたり、紫式部日記を元にしてはいるが、祝いの儀式、華麗な宮廷行事の様子が克明に描かれ、同時にそうした華やかさに同化できない自己の内面が鋭く凝視されている。
ライザさん、あんたの脳は立派に日本人だよ。
なんと、彼女は16歳で英訳の源氏に魅了され、日本を研究。大学時代には来日して「市菊」という名前で芸者までやったという。そして、着物の研究で博士号を取得している。
最近は、今年の年末に公開予定の「サユリ」という映画のスタッフになっているという。
物語の最後には、未公開だった、という設定で、宇治十帖の最後に「稲妻」という最終章が与えられている。これはライザ女史の創作だが、素晴らしい結末になっている。
日本人必読。
そして、この素晴らしい作品を書いてくれた作者と訳者に心からお礼をいいたい。
紫式部物語〈上〉―その恋と生涯
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by hajime_kuri | 2005-08-28 05:54 | 時代 | Comments(5)
最近、大江戸づいている読書傾向。
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江戸時代は武士階級に支配され、農民は搾取され、町人は貧乏で、いつでも一揆などの階級闘争が起きる寸前の前近代だ、というのが、俺たちが学校で習ったこと。ところが、この本を読むと、そうではないことが明らかになる。また、同時に、武士階級も商人階級もそろって連を作って楽しんでいた狂歌が、どうして社会の授業では「武家支配の抑圧に対する人民の抵抗手段」になってしまうのか。
大いに考えさせられます。
江戸時代は、のどかだった。俺たちは、戦後、社会主義的な歴史観を持った教員達に間違った江戸時代観を植え付けられていたのだった。先月に引き続き、大江戸ものを読んでいるが、目から鱗が落ちる思いだ。
江戸時代は武士階級に支配され、農民は搾取され、町人は貧乏で、いつでも一揆などの階級闘争が起きる寸前の前近代だ、というのが、俺たちが学校で習ったこと。ところが、この本を読むと、そうではないことが明らかになる。また、同時に、武士階級も商人階級もそろって連を作って楽しんでいた狂歌が、どうして社会の授業では「武家支配の抑圧に対する人民の抵抗手段」になってしまうのか。
なかでも初めて知ったのが、江戸の上水。時期的にはロンドンの水道と同時期だが、その規模と管理など、世界で最初にして最大の事業である。パリよりも早い。市民の識字率なども含めて、江戸時代に、明治維新以降の近代化の礎はすべて完了していたということがよくわかった。

目次

●江戸という時代
江戸との出会い
教科書の江戸時代
元禄という時代
香港と江戸
江戸を見る
外国崇拝大国
江戸の中の近代
●江戸の楽しみ
江戸のファッション
江戸庶民のおかず
江戸のうなぎ屋
遊芸にかけた江戸庶民
江戸の出版事情
拳の話
●江戸の暮らし
江戸川柳と結婚
江戸の農地
木戸の話
無から有は生じない
小判と猫のエネルギー
昔のつくり酒屋
『上水記』を読む――江戸の飲み水事情
●言葉と江戸
西郷銅像の碑文
受け身形にこだわる

江戸のまかない―大江戸庶民事情
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by hajime_kuri | 2005-07-18 21:43 | 時代 | Comments(0)
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江戸時代の庶民を中心とした時代様相と生活環境を、絵画資料を主軸に展開させ、在りし日の姿を眼前に再現する。江戸時代には日常茶飯であったが、現在は廃れてしまった事柄を中心に取り上げている。94年刊を改装したもの。日本は文明国だと思いましたよ。面白かったのは、絵が多くてしかも江戸の庶民のユーモア感覚が抜群なこと。
例えば、江戸は慢性的に女性が少ない都市なので、吉原が発達したとか、さらに女性の力が強くて、階級が下々になるほど「かかあ天下」であったとかの話の最後に、当時の川柳が、「間男をせぬを女房恩に着せ」とか添えてある。
また、だらしない格好で寝そべって話しかける父を、一切無視している母と娘たちのひな祭りの画には、「ひな祭り旦那どこぞへ行きなさい」の句。
思わずニヤリとしながら、ご先祖に思いをはせてしまった。いや、日本人は面白いよ。
時代小説ファンは必携。

目次

カラー図版 江戸の華
第1部 町と名所
・世界一の大都市
・江戸八百八町
・江戸名所
第2部 社会と住民
・行政と司法
・顧客商売
・士農工商
・暮らしの基準
第3部 住居と生活
・住宅と家財
・衣服と流行
・外出具
・結髪と化粧
・食べ物と嗜好品
第4部 慣習と人生
・年中行事
・信仰と迷信
・人生行路
第5部 文化と趣味
・町人文化
・遊びと趣味
・物見遊山
第6部 芸能と娯楽
・江戸歌舞伎
・大衆娯楽
・別世界吉原
・市中の性風俗
第7部 変貌
・災害と異変

大江戸ものしり図鑑―ひと目で八百八町の暮らしがわかる
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by hajime_kuri | 2005-06-26 14:15 | 時代 | Comments(0)
a0003784_65614.jpg ドラマで一世を風靡した、おなじみシリーズの第一作だ。
 『赦免花は散った』は、紋次郎がこの世でただ一人、気を許した兄弟分、日野の左文治の身代わりで三宅島に島送りになるというところから始まる。その時、紋次郎には密かに慕うお夕というかたぎの娘がいた。しかし、流人船が出ようとしたとき、お夕は橋から身を投げて自殺してしまう。自分のためにかたぎの娘を死なせたことに紋次郎は苦しむ。
 三宅島での紋次郎の心の支えは、誰の子かもわからぬ子を身ごもった、同じくお夕という名の女囚の面倒を見ることだ。死んだお夕の供養のつもりである。しかし、その女も身を投げて死んでしまう。それを機に、紋次郎は誘われていた島抜けに加わり、江戸に戻る。するとそこには、死んだはずのお夕の姿が……。

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by hajime_kuri | 2004-02-18 06:57 | 時代 | Comments(0)