「ほっ」と。キャンペーン

「読書記録」を中心に、読んだ本、見た映画の記録、書評、ブックガイド、その他日常の徒然ね。


by hajime_kuri

カテゴリ:社会科学( 8 )

今回ご紹介するのは、民俗学の学術書。
「ヴァンパイアと屍体―死と埋葬のフォークロア」

世界各地の葬儀・埋葬の儀礼や方法と、禁忌について調べつつ、ヴァンパイアをはじめとする死者の蘇り伝承を考察する書。
興味深かったのは、ヴァンパイアを殺すために墓を暴いて死体を損壊するわけだが、その際の伝承にあるヴァンパイアの体の特徴が現代の検視所見から分析される。
すると、死んでいるにもかかわらず生きている時と同じような出血、とか、ピンク色の生きているかのような肌の色などがすべて理論的に説明でき、べつにヴァンパイアでも何でもないことが明らかになる。
そして、ヴァンパイア騒動とは、結局、中世の村という共同体の中の不審事をきっかけとする不安やもめ事を「ヴァンパイアのせい」にして解決していたという側面を見出すのだ。
私は、これで、一つ短編小説のアイデアをいただきました。
高いけど、おすすめの本です。
単行本: 453ページ
出版社: 工作舎 (1991/07)


ヴァンパイアと屍体―死と埋葬のフォークロア


(広告)

作者・栗林元は小説を書いています。よろしければお読みください。(Kindle版です)

1988 獣の歌/他1編

神様の立候補/ヒーローで行こう!

盂蘭盆会●●●参り(うらぼんえふせじまいり)他2編

薔薇の刺青(タトゥー)/自転車の夏
小説指南
[PR]
by hajime_kuri | 2016-03-05 11:37 | 社会科学 | Comments(0)
a0003784_1051067.jpgこれは興味深い本だった。アマゾンのオススメメールで知らされた本で、まさにアマゾンさんありがとう、である。
以下、アマゾンの紹介を引用。
「たかがマンガ、たかがアニメ」が中国の若者たちを変え、民主化を促す--? 日本製の動漫(アニメ・漫画)が中国で大流行。その影響力は中国青少年の生き方を変え、中国政府もあわてて自国動漫産業を確立しようとやっきになっているほど。もはや世界を変えるのは、政治的革命ではなく、大衆の意識や行動を生活レベルで動かすアニメや漫画のようなサブカルチャーなのだ!
以上、引用。
ちょうど俺の娘(大学二年生)が第二外語で中国語をやっているのだが、彼女たちの世代は、「スラム・ダンク」と「セーラームーン」の話をすればすぐに中国の若者と友達になれるわけである。
中国共産党は、ディズニーなどのアメリカのアニメには実は十分警戒していたという。というのもそれらのコンテンツには、アメリカ的民主主義のエッセンスが色濃く反映されているからだ。それに反して、日本のアニメには一見政治思想は無縁である。しかし、自由競争で面白さを競い合った日本のアニメやマンガに親しんだ中国の若者は、もう「党の指導」のもとに制作された中国産アニメでは心を動かされなくなっている。何より、日本のアニメは、中国の若者たちを「社会には色々な意見があってもいい」という世界観に染め上げてしまったのである。
ソフトパワーってのはこういうことなのか、と腑に落ちたのであった。
中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす (NB online books)
※リンクは別ウィンドウで開きます。あしからずご了承ください。
[PR]
by hajime_kuri | 2009-06-02 10:05 | 社会科学 | Comments(4)

趣都の誕生―萌える都市アキハバラ (幻冬舎文庫) (文庫)
森川 嘉一郎 (著)

なぜ秋葉原はオタクの聖地へと変貌したのか。
なぜパソコンマニアは、アニメ絵の美少女を好んだのか。
なぜ“趣味”が都市を変える力を持ったのか。
文庫になったの待ちかねて購入した一冊である。
特に今回は2003年の発表以後に急変した秋葉原のその後を追った一章が加えられていて興味深い。
秋葉原を定点観察することで、その変遷を多角的に検証している。秋葉原デパートのフロアの店が、どのようにオタク化していったかの検証など興味津々だ。

80年代のSFシーンを激変させたギブソンの「ニューロマンサー」は日本の千葉市が舞台となった。その千葉から一直線に到達するサイバーなスポットが「アキハバラ」だ。
日本人だけでなく外国人までも魅了する魔窟のような町、確かにドラマの舞台にはうってつけで、劇場型犯罪などが起きるのも何となくうなずけるのだ。

ちなみに、息子の中学校の修学旅行は「東京・日光」が行き先だったのだが、学校側からの指導で、秋葉原は「行ってはいけない場所」になっていたそうである(苦笑)。

趣都の誕生―萌える都市アキハバラ (幻冬舎文庫)
ニューロマンサー (ハヤカワ文庫SF)
[PR]
by hajime_kuri | 2009-04-09 16:25 | 社会科学 | Comments(2)
a0003784_0114453.jpg
昭和7年、日本が中国東北に移民500万人構想で築いた巨大国家、満州帝国。その誕生の背景から崩壊までの経緯を20ポイントで解説している。
よくまとまっていて面白い。
アマゾンのレビューには「戦後自虐史観」なんて書く人がいるだろうなと思っていたら、やっぱりいたよ(笑)
この本の、まず評価するべきは、日中戦争への突入が「一部軍部の暴発」というような責任逃れな解説をしていないところだ。
日露戦争で9万人近くの血を流した日本国民の、列強へ仲間入りしたい、列強に取られる前に取る、という大きな願望があったからこそ起きたことだということ。いわば、日本人のルサンチマンが引き起こした戦争だ。関東軍はこの国民の願望をうまく利用したわけ。
思えば、俺の小学生時代(昭和40年代)、社会の授業で教えられた戦争は、太平洋戦争ばかりで、しかも空襲・玉砕・原爆、あたかも戦犯で裁かれた以外の日本人は、みな哀れな戦争犠牲者です、という内容であった。こういった内容に対する反発が、「戦後自虐史観」と言われる極端な教育を生み出したのだろうと推測するがいかがであろうか。
また、「戦後自虐史観」に反発する評論家や学者が、「南京大虐殺」に対して、プロパガンダだ、本当はもっと少ない、という説を、「鬼の首でも取ったように」展開するシーンをテレビなどで見ると、少し悲しくなる。30万人も数百人も、虐殺には変わりない。ベトナムのソンミ村は数十人であれだけの大騒ぎだったのに。
ここで思い出すのが、コメディ映画「弾丸特急ジェット・バス」に出てきたギャグ。雪に閉じこめられたロッキー山脈で遭難したバスを運転していた主人公が、仲間から、「こいつは生き残るために、死んだ乗客を三人食った」と言われて、激怒する。「俺が食ったのは、右足だけ、それも一本だ」(笑)
「プロパガンダだ、本当はもっと少ない」という言葉に似ていない? 諸外国は、そんな冷笑で日本を見ているのだと思うが、どうだろうか。
「満州帝国」がよくわかる本
[PR]
by hajime_kuri | 2005-01-09 00:50 | 社会科学 | Comments(0)
a0003784_232910.jpg1776年に発刊され、たちまち稀代の名著と評されたギボンの不朽の傑作『ローマ帝国衰亡史』。
本書は、帝国の絶頂期から滅亡へといたる『ローマ帝国衰亡史』の骨子と、そこには描かれていないがローマ帝国史を語るには避けられない建国期から帝政の黎明期へといたる発展途上の時代の動きを、あわせて30ポイントにまとめて解説。

目次

[1]最初のローマ帝国はどれほど大きかったのか
[2]地中海の覇者カルタゴとの戦争はどうしておきたのか
[3]ローマは天才戦略家ハンニバルと、どう戦ったのか
[4]どうしてアフリカを手中にできたのか
[5]なぜ周辺民族や奴隷の反乱が多かったのか
[6]カエサルはどのようにガリア征服を成功させたか
[7]クレオパトラは、なぜカエサルを選んだのか
[8]カエサルは、なぜ暗殺されたのか ほか

ギボンの書かなかった、共和制ローマの建国からポエニ戦争までもカバーされているので助かる。
帝政ローマといっても、皇帝は民衆の人気に支えられ、いわば役職・機関であるということがわかる。アジアの皇帝とは一味違うのだ。だから解放奴隷の息子から皇帝になるものもいるし。
またローマが東西に分かれた後、東ローマ(ビザンチン)帝国の公用語がラテン語からギリシア語に変わる、という一言で、東ローマ帝国はもうイタリアではないということが分かる。高校の教科書もこういう勘所をつかんだ記述なら面白いのになあ。
実に面白い。解説本といっても馬鹿にできないなあ。

30ポイントで読み解く「ロー帝国衰亡史」...PHP文庫←アマゾンへGo!

(広告)

作者・栗林元は小説を書いています。よろしければお読みください。(Kindle版です)

1988 獣の歌/他1編・栗林元

神様の立候補/ヒーローで行こう!・栗林元

盂蘭盆会●●●参り(うらぼんえふせじまいり)他2編・栗林元

薔薇の刺青(タトゥー)/自転車の夏・栗林元
[PR]
by hajime_kuri | 2004-07-19 23:30 | 社会科学 | Comments(0)
a0003784_201311.jpg 村を救った猿神のもとへ輿入れした少女が、夫を殺害して村に戻ってくるという昔話「猿聟入」。そこで語られた供犠と異類殺害の物語は、その後のマンガ、小説、映画などにも繰り返し現れてくるいわゆる物語のフォーマットである。
 過去の民話と現代のサブカルチャーを通底するものは「通過儀礼」である。通過儀礼とは、ムラなどの閉鎖された秩序の中で、「子供」という神の領域に近い存在を「大人」という社会の一員として内部に取り込むことである。儀礼の後は、青年小屋のような場所にこもった後、社会の一員として仕事が与えられる。近代となってムラ社会が崩壊した後は、ムラを出て「都市」へ行くということが通過儀礼になっていく。しかし、全国がほとんど「都市」となった現在、子供達は「通過儀礼」を失っているのだ。今や、「通過儀礼」は与えられることなく、個人が自力で「成熟」することで果たすしかない。ある意味、なんと厳しい時代ではないか。
 社会が自由になり、自分のすべての選択を自分の責任で果たさなければならないときに、人がその自由の重みの前でおののくように(→実存主義やね)、若者は、「成熟」することにおののいている。
 作者は、せめて、ビルドゥングス・ロマンが、この通過儀礼の間の「移行対象」(いわゆる「ライナスの毛布」や「熊のぬいぐるみ」のように成長の過程で母とかの代替として機能し、成長後は不要となって「捨てられる=殺される」人身御供)となりうるのではないかと考える。そして積極的にそのようなロマンを提供しようという決意表明になっている。
 「タッチ」「ホットロード」「めぞん一刻」から「鉄腕アトム」まで、、「民俗学者」大塚英志が分析するところが面白い。眼からウロコである。創作に携わる人間は必読といえる。

 私も以前、「通過儀礼」もののホラー作品を書いたことがある。↓
 「盂蘭盆会・・・参り(うらぼんえふせじまいり)」(無料公開終了)
 これは、32歳の時、長女が生まれたばかりの時に見たグロテスクな夢がモチーフになって生まれた小説だ。何故そんな夢を見たかが不思議で、文芸仲間の友人が「作品化することでわかるかもしれない」と言ったことをきっかけに書き始めたものである。
 書くことによって、はじめて父(確固たる社会の一員)になるということに、本能的におびえていた自分の心と直面することができ、その心と決着をつけることができた作品である。「小説を書く」ということが、俺にとっての一つの「通過儀礼」だったのだ。
 同じことは俺の他の作品にもあてはまる。その当たりは、また項を改めて書いてみたい。
人身御供論―通過儀礼として...角川文庫←アマゾンへGO!
[PR]
by hajime_kuri | 2004-03-16 20:14 | 社会科学 | Comments(0)
a0003784_121639.jpg 文芸評論家から出発し、「オカルト」や小説「宇宙パンパイヤー」などでも有名なコリン・ウィルソンの極めて初期の作品である。
彼が「アウトサイダー」などで提唱した実存哲学的な興味から「殺人事件」の研究を始めるスタート的な書である。
 20世紀に入ってからの殺人事件は精神的な傾向が強くなった。彼は、それを現代の社会と個人の関係から考察している。
 当時はまだ極めて希だった「動機のない殺人」。すべての芸術はある意味「閉じこめられた精神の脱獄」の試みだと言われる。「動機のない殺人」の中にはこの「精神の脱獄」の粗雑な現れであるものがある、というのに思わず納得させられるものがあった。

More つづきを読む
[PR]
by hajime_kuri | 2004-02-22 12:17 | 社会科学 | Comments(3)
a0003784_05123.jpg 現在40歳以上の方なら、大陸書房という出版社の名前を聞いてニヤリとするのではないだろうか。
 また「竹内文書」とか「日ユ同祖論」だとか、さらに極端になると「地球空洞説」とか「フリーメーソンの陰謀」だとかのいわゆるトンデモ本をごらんになったことがあるのではないだろうか。
 今回取り上げる長山靖生著の「偽史冒険世界―カルト本の百年」は、そのようなト本の中でも特に、日本の「偽史」と呼ばれるものについて論じている。

(目次)
・どうして義経はジンギスカンになったのか
・なぜ南は懐かしいのか
・トンデモ日本人起源説の世界観
・日本ユダヤ同祖説と陰謀説のあいだで
・言霊宇宙と神代文字
・竹内文書は軍部を動かしたか

 これらの説に共通するのは、「いまでこそ日本人は小さな日本列島にいるが、古代は世界に雄飛した偉大な民族だったのだ」ということ。いわばコンプレックスを持った民族の「願望」である。
 長山氏は、明治以来、ひたすら先進国に追いつきたいとした「後進国」日本の国民が抱いていたルサンチマンが、これらの珍説を歓迎したのだとする。確かに、そういった話は気持ちいいだろうからね。その証拠に、いつの時代にもこのような珍説本が書店から姿を消すことがない。大陸書房は無くなったが、今は学研が出している(笑)
 また、それら珍説を唱えて酔いしれた人々(酒井勝軍とか山根キクとか)の実際の生涯も詳細に紹介されていて興味深い。
 日本は本当は偉大なんだ、偉大になりたい、世界から一目置かれたい、という願望。おそらく、純チャンがイラクに自衛隊を送りたい心境も似たようなもんだろうな。(2004-2-14)
偽史冒険世界―カルト本の百年ちくま文庫←アマゾンへGO!

(広告)

作者・栗林元は小説を書いています。よろしければお読みください。(Kindle版です)

1988 獣の歌/他1編・栗林元

神様の立候補/ヒーローで行こう!・栗林元

盂蘭盆会●●●参り(うらぼんえふせじまいり)他2編・栗林元

薔薇の刺青(タトゥー)/自転車の夏・栗林元
[PR]
by hajime_kuri | 2004-02-14 00:52 | 社会科学 | Comments(0)