「読書記録」を中心に、読んだ本、見た映画の記録、書評、ブックガイド、その他日常の徒然ね。


by hajime_kuri

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この作品は、「死」についての物語である。さらに正確にいえば死による「別れ」の物語だ。
ゆるやかにつながった短編は、ある話では、学友の死に直面する少年、ある話では、余命の宣告を受けた父親、余命の短い妻の死に対する夫、など、さまざまな「別れ」とその「悲しみ」からの再生を描いている。
登場人物たちを語り見つめる作者のまなざしの、なんという優しさよ。
俺は、重松氏の作品を読むたびに、死と別れから逃れられない「人」に対する優しい気持ちが湧いてくるのを止めることができない。
普段は、「けっ、人生なんて」とニヒルを気取りがちな俺が、すぐに家へ帰って、家族の顔を見たくなってしまう。そして、俺自身が、子供たちや妻から、どれほど支えてもらったかということを感じて、「ありがとう」という気持ちになる。
読み終わるたびに、俺にそんな気持ちを与えてくれる重松氏の作品には心から感謝したい。

その日のまえに (文春文庫)
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by hajime_kuri | 2013-04-27 21:32 | 純文学 | Comments(0)

「舞姫通信」重松清



重松清の「舞姫通信」は「自殺」の話である。
「自殺」で、まず我々が思い浮かべるのは、自ら死を選んだ当事者のことなのだが、実際にはむしろ大きな傷を負うのは残された者なのである。
「なぜ死を選んだのか」、「なぜ助けることができなかったのか」等、日常の中に取り残された者の気持ちと、その気持ちと折り合いをつける過程がこの作品の縦糸である。
自殺した兄の双子の弟が主人公。その兄の残された恋人。主人公が教師として働く高校に残る、自殺した女生徒を神格化した舞姫という学校神話。心中で死にそこなった少年。そしてマスコミ経由で脚色された自殺事件に向き合う大衆という「残された者たち」。
この物語構成のなんという巧さ。
登場人物たちを通じて、我々読者は、忘れていた死を思うのである。
善悪に関係なく、「人はいつでも死を選ぶことができる」という事実は、いったい何の意味があるのだろうかと。

実は、私もこの主人公と同じ年齢のころ(20才)に、高校時代の学友が自殺した経験がある。私もまた残された者なのだ。そして、その4年後、社会人2年目に、私は自殺を試みたことがあるのだった。自殺は、伝染する場合もあるのだ。

そんな30年以上も昔の自分の心に向かい合ってしまった「メメント・モリ」な作品である。

舞姫通信 (新潮文庫)
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by hajime_kuri | 2013-04-21 21:43 | 純文学 | Comments(0)

配送の仕事待ちに読了した。
三流大学の応援団が存続の危機に瀕している。4月に新団員が入らなければ、団は消滅する。
OB会長の企業経営者がとった奇策は、自分の会社に勤務する45歳の平課長を社会人入学させて団の再生を託すことだった。
社命で応援団長にされた親父社員の抱腹絶倒の体験。
もともと大学の体育会武団連合の一員であった俺には、「わかるわかる」という部分が多くて楽しかった。
理不尽極まりない慣習やしきたり、その先にある感動。
ショッピングモールのベンチで待機中に読んだけど、笑いをこらえたり、涙をこらえたり大変だった。
世代間のギャップを乗り越えて、団員たちと深まる絆に、うん、うん、そうなんだよな、とうなずきながら引き込まれた。
これから重松清の作品を少し読もうと思ったよ。
あすなろ三三七拍子

あすなろ三三七拍子(上) (講談社文庫)

あすなろ三三七拍子(下) (講談社文庫)


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作者は小説を書いています。よろしければお読みください。(Kindle版です)

1988 獣の歌/他1編

神様の立候補/ヒーローで行こう!
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by hajime_kuri | 2013-04-06 19:35 | 青春 | Comments(1)