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「読書記録」を中心に、読んだ本、見た映画の記録、書評、ブックガイド、その他日常の徒然ね。


by hajime_kuri

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 二回で終わるつもりだったけど、意外に好評なのでシリーズ化する事にした。ちなみに、この手法は、マンガ編集家の竹熊健太郎さんが相原コージさんと組んだ作品「サルでも描けるマンガ教室」(略してサルマン)で「とんち番長」という架空の連載マンガを設定して語った方法と同じだなと気づいた。
 さて、まずは、このドローン部隊の話、仮にタイトルを付けようと思う。もともとタイトルには、「~の翼」とか「翼の~」にするつもりだった。「翼」には、大空を羽ばたく「自由」「希望」「夢」「未来」のようなイメージがあり、「戦争」という「不自由」「絶望」「絶たれた夢や未来」などをイメージさせるネガティブな単語と組み合わせていろいろな寓意を込められそうに感じていたからだ。
 そこで、この作品には仮に「イカロスの翼」とタイトルを付けることにする。イカロスとはギリシャ神話の人物で、父親の大工ダイダロスとともに鳥の羽を蝋で固めた翼を作り空を飛ぶ。父親の警告を無視して有頂天になり高く飛びすぎたイカロスは太陽の熱で蝋が溶け海に落ちて死ぬ。主人公の物語を暗示させるわけだ。
 では、登場人物をもっと掘り下げていこう。まずは、登場人物の一覧だ。構想のこのあたりで、作家は人物一覧表や設定集などを作り始める。


ドローン部隊の操縦者
タカシ・子供の頃の事故で下半身が麻痺して車いす生活。
ケンジ・退役軍人の元パイロット。撃墜されて障害者になった。
アキラ・ゲームプレイヤー上がりの操縦者。ゲームジャンキー。

障害者支援ボランティア
マリア・タカシを支援してきた女性で、密かにタカシに思いを寄せているが、美人ではない(←ここ重要)。


 今回は、タカシの人物を掘り下げて考えてみる。ここを微細に決め込むとそれだけで物語の中に必要なエピソードなどが決まってくる。

 タカシは幼い頃に事故で下半身が麻痺することになるのだが、これを生まれつきではなく事故にするのには理由がある。私は親の不注意で事故に遭ったことにしようと考えた。親は罪悪感からタカシに対する厳しい教育ができずタカシの性格にそれが反映されるのだ。
 タカシは、学校生活や恋愛など、思いどおりにならないことを、自分の障害のせいだと思って、親や世間を恨む。
 この、「思いどおりにならないことを、・・・のせいだと思って、親や世間を恨む」というのは、誰の心にもある感情で、それだけに読者の共感を得やすいし感情移入もしやすい。物語では、わかりやすくそれを障害にしてあるだけだ。
 このタカシの性格を物語るエピソードは作品内で不可欠だろう。日常の描写の中で、断片的な回想という形で出すか、章を立てて物語るかは後々考えるとして、幼年時代、少年時代、思春期などにタカシがどんな体験をしてどんな気持ちを抱いたかを考えてまとめることにしよう。
 すでに彼を支援するマリアという女性との出会いはあるが、彼女に対して恋愛感情はない。マリアは心優しい少女なのだが、若い男性から恋愛対象として見られるような魅力には乏しい。ここが重要で、この物語の落とし前の一つとして、ラストでタカシがマリアの本当の優しさに気づくということも作家は念頭に置いているわけなのだ。
 タカシは、フライトシミュレーターゲームの才能でドローンパイロットになるのだが、そこでの出会いや甘えを許さぬ訓練などで次第に人間として成長していく。戦争のための訓練でも人間性が磨かれることはある。これも大きな皮肉である。
 タカシは非凡な才能を発揮する。本来下半身の運動の為の脳の運動野をすべてドローンの操作に振り向けられるからだ。軍の幹部は、優秀な戦果を挙げる可能性のある障害者を積極的に軍に登用することを決める。タカシは軍の広告塔となりマスコミで一躍英雄になる。富も名誉も手に入れる。
 有名なアイドルと浮き名を流すタカシ。だが本当の愛は得られない。
 「僕に障害があるからなのか?」と問いつめるタカシに、「あなたのそういう考え方がいやなの」と告げられる。そして、追い打ちをかけるように、テレビの報道で、敵国もドローン部隊を編成したことを知る。そのパイロットはやはり障害者。そのパイロットが障害者になった戦いこそ、タカシが英雄になった戦いだったのだ。ここで、今風に「憎悪の連鎖が終わりなき戦いを生む」という視点もクリア。
 絶望して心を病んだタカシは、墜ちた英雄(おお、ここでイカロスと一致した)として世間から忘れ去られる。そんな彼を救ってくれたものこそマリアの変わらぬ愛情だった。

 ここで、読者の皆さんはこのBLOGでかつて書いた、「主人公に業を背負わせ、ラストでそれに落とし前をつける」(※1)という言葉を思い出していただきたい。登場人物を掘り下げるということは、まさに「背負わせる業と、その落とし前」を考えることなのである。今回のように複数の登場人物のエピソードが絡み合う構成(※2)では、それぞれの人物に「業と落とし前」を用意してやりたい。次回は、ほかの人物たちを考えていこう。お楽しみに。
 ※1 脚本家・笠原和夫氏の言葉だったと思うが、記憶あいまいである。
 ※2 作者の心の中では、すでに、この作品は「神視点の三人称」で書くことが決まっている。
 

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by hajime_kuri | 2015-02-21 22:20 | 小説指南 | Comments(0)

日常における文章修業

 今回は、文章を書いていく上での訓練について。
 作品内のシーンを書いている時に、「適切な言葉が出てこないのです」、という声をいただいた。

 普段から描写力を磨く方法として次のようなものがある。

 日常生活で出会ったちょっといい風景や光景を、その都度、心の中で文章にしてみる癖をつけるのだ。
 その際、その光景で感じた気持ちを人に語る上で、どのような順番で叙述すべきかを考えて、脳内で推敲するのである。その文章は別にテキスト化する必要はない。ただ、その脳内作業の過程はしっかりと記憶される。私の場合は、そのような文章を日記に残しておいたり、人に読ますだけの価値のある文の場合はBLOGでコンテンツ化している。

 また、この作業のよいところは、観察力が磨かれることである。

 例えば、雨が降り始めたシーンを書く場合。

 昼過ぎから雲が出てきていたが、日没前には、ぽつぽつと雨が降り始めた。


 だけで終わらせずに、その光景を描写してほしい。

・降り始めた雨に、小走りで帰路を急ぐ通勤者
・塗れたアスファルトに、客待ちのタクシーの行列の赤い尾灯や、ネオンの灯が映っている様子
・雨の湿りを帯びた空気のにおい
・曇るメガネ
 など、その場面をリアルに伝える光景はいくらでも浮かぶ。

 ただ、この日常の脳内文章化作業で注意してほしいことがある。

 「陳腐な表現を使わない」ということだ。

 特に文章を書き慣れた高齢者、特に自分は文章が上手だと思いこんでいる方に多いのが、この「手垢の付いた表現の多用」である。

広い草原や雲海を見ると、必ず「絨毯を広げたように」と表現し、心に迫る感動は「怒濤のように」と表現してしまう。
 素人のエッセイや、自分史であれば許されるかもしれないが、小説を書くと決めた作家は、このような「手垢の付いた表現」は使ってはいけない。恥をかいてしまう。

 また、地の文での故事成語の多用も表現を陳腐にする。
 思い上がった井の中の蛙のような登場人物を、作者が地の文で、夜郎自大な人物である、と語るのではなく、別の人物に、「夜郎自大な奴だな」と言わせればいいのだ。

 また、さきほどの「手垢の付いた表現」も、登場人物に語らせるのならOKである。その場合、その人物の凡庸さを表現する一つの手法として言わせるのである。
 凡庸なのは登場人物だけで十分。作者まで凡庸になる必要はないわけである。

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by hajime_kuri | 2015-02-15 22:29 | 小説指南 | Comments(0)
 さて前回、私は、障害者も健常者とともに戦争に参加できる状況としてのドローン部隊を考えた。そこにドラマを盛り込むために考えたのが、次のキャラクターだ。
 幼少期に事故に遭い、下半身が不随となり車いすで生活する青年・タカシ。「健常者には僕たちの気持ちはわかりっこない」が口癖。屈折している。しかし、軍のドローン部隊の遠隔操縦パイロットとして採用され、「自由に飛べる翼を得た」「周囲から一人前の軍人として扱われる」という体験から、自信をつけアイデンティティーを確立していく。しかし、ラスト近く、自分が英雄として賞賛されたその任務で、敵国の少年が自分と同じ障害者になっていたことをテレビニュースで知り愕然とする。
 タカシと対比させるために次のようなキャラも考えた。戦場で受けた傷で障害者になったパイロットのケンジ。その腕を買われてドローンパイロットとして再び戦争に参加させられた男である。彼は戦争の前線を知っているため軍務に対してはニヒルな認識である。
 さらに、次のようなキャラも考えた。ゲームマニアのように任務にのめり込んだ青年・アキラ。人間は音や光の刺激に達成感や勝利感で分泌される脳内快感物質が条件づけられると一種の中毒になることがわかっている。まあ、パチンコやスロットがいい例だ。アキラは戦闘中毒になっってしまうのだ。
 戦闘で体を損なったケンジと対比させる、戦闘で心を損なったアキラという構図。
 さらに、タカシを支えるボランティアの少女・マリアという存在を考えた。彼女は、タカシが社会に出て自立していく力と支えになったものが、自分たちの支援や愛情ではなく、殺人ドローンと戦闘任務であることに打ちのめされてしまう。
 軍は、戦争遂行の為に、障害者の兵士・タカシを英雄化する。何とも皮肉な物語ではないか。
 最後に、任務に飲み込まれることなく、冷徹に見つめていたケンジこそが、この物語の語り手であることが読者にわかる。

 こうして、ドローンを使った戦争状況のなかで描くべきドラマが決まった。後は、彼らの心がそれぞれのゴールに到達するためのエピソードを考え、シーンを思い描き、それを文章で描写すれば、作品ができあがる。
 これが、私の小説の作り方だ。

 前提条件として、
 ・社会現象やニュースなどに常にアンテナを張る。
 ・過去の作品群を知っていて、発想や設定が重ならないかを判断できる。
 ・正邪、善悪などの見方が、一面的ではない。むしろ皮肉で意地の悪い見かたをすることができる。
 などの、日常の知見の蓄積や、考え方の修練が重要だと言うことがわかると思う。
 でも心配はいらない。小説を書きたいと思うみなさんにとって、この「日常の知見の蓄積や、考え方の修練」は楽しくて仕方がないものだという事がわかっているからだ。

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by hajime_kuri | 2015-02-02 19:43 | 小説指南 | Comments(2)
 今回は二回にわたり、実際に物語を着想してから膨らませていく過程を、実際にストーリーを作りながら解説していく。
ドラマや映画の原作を作っている的な感覚でお読みいただければわかりやすいと思う。すべての作家がこうしているとは言わないが、少なくとも私の方法はこうだ。

 きっかけは、イラクの戦場での、アメリカ軍の無人機(以降はドローンと表記)の運用部隊の話を見たことだ。
 戦場でのドローンは、プログラミングされて偵察任務に就くだけでなく、遠隔操作でテロリストを攻撃殺傷もする。ただ、その遠隔操作はアメリカ本土の兵士がPCのモニターを見てコントローラー(映像ではPSのコントローラーだった)で行う。
 まさにテレビゲームなのである。中東の砂漠でアメリカと戦う兵士は、ポテトチップを食べながらコーラを飲んでコントローラーを操るアメリカ兵に撃たれているわけで、そりゃあ腹も立つよなと思えるわけだ。
 戦争のゲーム化は古典的なSFのテーマであり、たくさんの小説や映画があるので珍しくもないが、それがここまであからさまであることに私は驚いたわけだ。

 ただ、この驚きだけでは、もう物語にはならないのが現代である。
 最初に考えたのは、リアルなオンラインフライトシューティングゲームだと思ってログインしてプレイしていたら、実際に地球の反対側で自分の操るドローンが人を殺していた、という「罪悪感を希薄化させるためのゲーム化」というストーリー。
 しかし、これは、過去にいくつも同じようなSF物語があり、今では普通の人の発想の範囲内である。わざわざ「小説家の俺が、新たに書くまでもない物語だよな」と思えたので、即却下。

 今度は、通常なら入隊検査や兵役検査で跳ねられるような人間でも任務に就けるし、9時から17時まで、昼休みもしっかりとって雨にも濡れずに出きるデスクワークの任務でありながら戦闘という最前線の業務という視点で考えた。

 すると、「このドローン部隊の戦闘って、障害者の方でも、健常者と一緒にできる任務だよな」と気づいた。
 そこで、私の頭に花火のように浮かんだ発想が、「障害者の自立支援・社会参加」「職場のバリアフリー化」といった「美しい理想」が、「戦争行為、破壊・殺傷行為」という「醜い現実」を支えるという、極めて皮肉な物語構造だ。

 ここで私は、この物語はいける、と直感した。障害者も健常者とともに戦争に参加できる状況にどのような物語を盛り込むか?
 次回はキャラクター設定に入っていく。

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by hajime_kuri | 2015-02-02 19:35 | 小説指南 | Comments(0)

テロ集団イスラム国に殺害された湯川・後藤の両氏のご冥福を祈ります。

さて、マスコミの後藤氏賞賛報道に違和感を感じる俺なのだが、その違和感を考えて言語化しておこうと思う。
まず、後藤氏を称賛する言論の中で、「瞬きのモールス信号で、助けるなと言っていた」というハリウッド映画もかくやと言う未確認情報まで飛び交っているのには苦笑した。
この事件を追い風に嬉々として政権批判をしていたら、国民から総スカンを食ってしまい、表立って政権を批判できなくなった鬱憤が後藤氏賞賛の原動力ではないのだろうか。
つまり、「無能な政府に代わり湯川氏を救いに行った」とか、「有志国への支援まがいの発言でイスラム国を刺激して、こんな素晴らしいジャーナリストを殺した安部」と言いたい気持ちが込められているのではないか。

ちょうど、過去の反省が足りない日本を攻めるために過去をしっかりと見つめるとドイツを称賛する大韓民国のように。

そんなマスコミやジャーナリズムの心が透けて見えて、日本の言論も幼稚になったものだと思う。
一番気の毒なのは、マスコミや言論からピエロ扱いされているもう一人の犠牲者・湯川さんの親だと思う。あの父親の心情にまで思いをはせるマスコミ各社が皆無であることもまた幼稚さである。

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by hajime_kuri | 2015-02-02 09:04 | 時事 | Comments(0)
電子フリーペーパー「電子PUB」第三号が配布開始。
ここで、新しい作品を連載開始しました。
よろしくご注目ください。

電子パブ第三号
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by hajime_kuri | 2015-02-01 07:28 | SF | Comments(0)