「読書記録」を中心に、読んだ本、見た映画の記録、書評、ブックガイド、その他日常の徒然ね。


by hajime_kuri

<   2015年 03月 ( 5 )   > この月の画像一覧

 今回は、物語を発想して膨らませていくに際しての留意点として、作品の同時代性という事を考える。
 「イカロスの翼」(仮)という戦争をネタとしたエンターテイメントを書いていくわけだが、今までのエンターテイメント作品は戦争をどう語ってきたのだろうか。
 戦争を悲劇や愚行としてとらえるのは当然であるが、遙か歴史の彼方の戦争はいざ知らず、近代の戦争、特に第二次大戦や太平洋戦争などに関しては、戦争を引き起こした悪とそれと戦った正義という「正義対悪」の図式が多かった。いわゆる国連(英語では連合国である)史観と呼ばれるもので、日本やドイツなど敗戦国で描かれる映画や小説ですら、国連史観に基づいた反省が盛り込まれていないと評論家からたたかれるほどである(苦笑)。
 ところが、このような「正義対悪」の単純な図式で物語を作ると現代では恥をかいてしまう。その契機になったのはベトナム戦争である。この泥沼のような戦争で、アメリカの若者たちは、自分たちの国が正義で、守ってあげた国から感謝される、という第二次大戦の頃のような幻想は抱けないことに気づいてしまったのだ。戦争とは、「正義対悪」ではなく、「正義対もう一つの正義」ということ。
 さらにイスラエルの入植を機会に始まった中東戦争。イスラエルとパレスチナの終わりにない戦いは、憎しみによる復讐が新たな憎しみを呼ぶ、という「憎しみの連鎖」であるという事を人類に教えてくれた。

 今、戦争に関して物語を作るとすれば、この「正義と正義の衝突」「憎しみの連鎖」とい二点の視点を欠いた作品は同時代性を欠いた極めて幼稚なものになってしまうのだ。

 この点、日本のアニメなどのエンタメは敗戦国であったということもあり、早い時期から悪とされる側にも事情がある、という視点は持っていた。ガンダムで言うならば、ジオンにはジオンの正義があるってことね。
 アメコミでも、大戦中は日本軍やナチスと戦っていたキャプテンアメリカが、ベトナム戦争以降は、製作者スタン・リーの奇跡的な手腕でこの「正義と正義の衝突」に気づいて路線変更した。(このあたりは小野 耕世さんの著作を参考にしてください)
 どうしても単純に多くの敵を倒していく爽快さを求める作品の場合、その敵は、無慈悲な宇宙人(インディペンデンスッデイ)や、人類を支配しようとするコンピューター(ターミネーター)や、知性のない虫の大群(スターシップトルーパー)になっていった。今、ハリウッドのSF映画で大量に殺戮されている、これらの敵たちは、以前はネイティブアメリカン(西部劇)であり、日本軍やナチス(戦争映画)であり、中東系のテロリストであったのである。

 これが、作品の同時代性という事なのだ。

 太平洋戦争を語るのならば、悪い敵国の兵隊を倒して我勝てり、ではもう幼稚すぎるのである。
 現代で、太平洋戦争を舞台にした作品を作る場合は、物語を通して主人公が、この戦いは「正義と正義の衝突なのだ」と気づく、というのが現代的な描き方なのである。その好例が、C・イーストウッド監督が、アメリカ人に向けて語った、「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」の二本の映画であろう。前者は、戦争宣伝に翻弄された兵士の回想で、アメリカ人の「正義」に皮肉な目を向け、後者はアメリカとは「別の正義」で愚直に戦った日本兵を描いて「正義の衝突」を見せている。
 これこそ、現代の戦争の描き方だと思う。



小説指南 | Cyta.jp

(広告)

作者は小説を書いています。よろしければお読みください。(Kindle版です)

1988 獣の歌/他1編

神様の立候補/ヒーローで行こう!

盂蘭盆会●●●参り(うらぼんえふせじまいり)他2編

薔薇の刺青(タトゥー)/自転車の夏
[PR]
by hajime_kuri | 2015-03-29 18:45 | 小説指南 | Comments(0)
「イカロスの翼(仮)」を作っていくシリーズ第五回。今回は今までの行程を実際のアプリ「Story Editor」に落とし込んでいく実技の解説。
このソフトはアウトラインプロセッサという企画や物語などを作っていくツールで、みなさんおなじみのMSパワーポイントもこの一種である。パワーポイントのアウトライン表示がまさにそれ。
私の愛用する「Story Editor」、実はWindows7以降は未対応になっている。ただし使えないわけではない。インストールに際してインストーラーを使う場合が未対応なので、プログラムフォルダ自体をダウンロードしてパソコンの任意の場所(デスクトップとか)に解凍し、フォルダの中の起動ファイル(拡張子が.exeのもの)を直接クリックすればよい。起動ファイルのショートカットをデスクトップに貼っとけばいいわけで、プログラムの起動をOS(Windows)に依存させないわけだ。
(1)
a0003784_10213365.png

(2)
a0003784_10205069.png

さて、起動した画面が(1)である。左にツリー表示されている。それぞれの要素をノードといい、その選択したノードの中身が右の大きな画面に表示される。まずは、登場人物の一覧が登録されている。
次の画像(2)があらすじノードを登録したところ。このノードの下位に各章のノードを登録する。その章の下位のノードにシーンを登録し、思いつきや防備メモや説明の文章を徐々に作品の文章に磨き上げていくわけである。このノードは順序の入れ替えもレベルの上下も自由にできる。新たなシーンや章の追加もできる。

折に触れプリントアウトして読み直したりしながら完成に近づいていくわけである。実際には、短い作品などは、このプロセスは脳内ですませてしまうのだが、この講座では、その思考プロセスを可視化するためにこれを使っている。昔は映画製作のシナリオ作業で、箱書きというカードを使う方法でストーリーづくりをしていたと聞く。チーム作業では当然イメージを可視化しないと共有ができないのでこのような方法を採るのだろう。
現代、チームでストーリーを作らなければいけないゲーム制作などの現場ではどのような方法やツールでストーリーを作っているのか興味がある。
私の知り合いのテレビ番組制作者やゲームに関わっている関係者の方も、ちょくちょくここを読んでいるらしいので、忘れないように、この場を借りてお願いしておこう。
「一度、教えてください」(いっぱいやりながら)

小説指南 | Cyta.jp

(広告)

作者は小説を書いています。よろしければお読みください。(Kindle版です)

1988 獣の歌/他1編

神様の立候補/ヒーローで行こう!

盂蘭盆会●●●参り(うらぼんえふせじまいり)他2編

薔薇の刺青(タトゥー)/自転車の夏
[PR]
by hajime_kuri | 2015-03-24 10:24 | 小説指南 | Comments(0)
Amazonストア内に、作家・栗林元の著者ページを作ってあります。
主な著作もこちらでダウンロードが可能です。
また、作者へのご質問などにもご利用いただけます。

栗林 元 著者ページ
[PR]
by hajime_kuri | 2015-03-23 21:43 | 小説指南 | Comments(0)

「イカロスの翼(仮)」の構想を練る四回目である。前回は主人公タカシのキャラクター像を練り込んだ。本当は、物語に登場するかどうかはさておき、家族構成や両親の仲がよかったか悪かったかなど彼の周辺まで考えるのだが、今回は、ストーリーに直結する他のキャラクターを練り込むことにする。

まず、タカシと同じドローン部隊に属するパイロット・ケンジだ。彼は元々空軍のパイロットで、任務中の戦傷で車いすを余儀なくされ、除隊したが技量を買われてドローンのパイロットになった。生粋の軍人キャラである。ただ、彼は生身をさらして戦闘に参加していただけに、安全なところで操縦される無人機で敵を殺傷することに強い嫌悪感と罪悪感を感じる。そんな彼が軍務を続けるには、それなりの動機が必要だ。そこで、彼が入隊したのは妻を敵国のテロで殺されたから、そして再び軍に戻って無人機のパイロットをするのは、残された一人娘を養育するためやむを得ず、という理由を付けた。
もう一人の同僚は、アキラ。彼もまた技量を買われてスカウトされるが、それはゲームからである。ケンジのように罪悪感も嫌悪感も感じることはない。ゲームの刺激におぼれるジャンキーである。体は正常でも、心と感覚を任務でぼろぼろにされた、彼もまた戦争の犠牲者なのだ。

そして、タカシを見守るマリアというキャラクターがいる。
彼女は障害者を支援するボランティアとしてタカシに接する。しかし、長い年月をかけてもできなかった、タカシが自信を持って社会へ出てアイデンティティーを確立する、という事を、自分たちの支援ではなく軍隊の任務が可能にしたということに打ちのめされてしまう。
しかし、軍隊の広告塔として英雄になったタカシが、一転、心を病んで絶望したときに、唯一彼を救うのがこのマリアという女性なのだ。


年上のケンジは、同僚のアキラ、そして主人公のタカシらが、任務を通して変わっていく様を冷徹に観察している。彼の視線が読者の視線だ。
ケンジは、憎しみの連鎖で終わり無き戦いを続ける自分たち人類に半ば絶望を感じ始めている。しかし、ぼろぼろになったタカシを最後に救ったマリアの無私の愛情を目撃し心に思う。
「人間の心にマリアのような気持ちがある限り、人類は必ず自分たちの愚かさを克服するに違いない。そう信じて、俺は絶望はしない。ぜったい絶望なんかしてやるものか」と。

この物語を構想しながら、作者は過去の戦争をテーマにした多くの作品を想起するのだが、それら作品の多くが、憎しみの連鎖から戦争をやめられない人類の愚かさを嘆いたり憤慨したり呪ったりするものである。そこで、作者はそれをさらに一歩進めて、そんな人類に絶望しない、あきらめない、というところまで歩を進めることにした(この、絶望を拒否する勇気は、「シン・レッド・ライン」という太平洋戦争を題材にしたアメリカ映画で唯一見たことがある、これは傑作映画ですのでぜひ見てくださいね)。
私は、このマリアというキャラクターに、その人間の心に潜む本当に「善」なものを仮託したわけである。

次回は、これらの設定をふまえて、思いついたエピソードを列挙(カード化)し、それをつないでストーリーラインを作る作業に入ろう。お楽しみに。

小説指南 | Cyta.jp
(広告)
作者は小説を書いています。よろしければお読みください。(Kindle版です)
1988 獣の歌/他1編
神様の立候補/ヒーローで行こう!
盂蘭盆会●●●参り(うらぼんえふせじまいり)他2編

薔薇の刺青(タトゥー)/自転車の夏
[PR]
by hajime_kuri | 2015-03-03 15:43 | 小説指南 | Comments(0)
電子パブ第四号

私の伝奇SF小説「不死の宴」の連載第二回も掲載中。

[PR]
by hajime_kuri | 2015-03-01 09:07 | 俺の作品 | Comments(0)