「読書記録」を中心に、読んだ本、見た映画の記録、書評、ブックガイド、その他日常の徒然ね。


by hajime_kuri

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 私の通った高校は地元では進学校だったため、生徒も大人びた連中が多く政治問題に対する意識が高かった。1973年の入学早々、朝教室に行くと、各自の机の上に「三里塚闘争を支援しよう」というガリ版のチラシが配られているような高校である。70年に向けた安保闘争の盛り上がりを引きずっているころで、地元国立大学の運動家が高校まで指導やオルグに来ていたのだ。
 当然、1977年の卒業式で、「君が代」の時に起立するものはほとんどいなかった。たった一人、韓国籍の女子生徒が一人だけ起立した。当時は、北朝鮮が労働者の天国と言われていた時代で、韓国は軍事独裁の国と言われていた。韓国の味方をすると右翼と言われた時代である。その在日の女の子は勇気があると思った。たった一人起立した彼女はいわば「スト破り」みたいなものだが、私はむしろ彼女の勇気に感動した。私たちは、先輩達の発する反体制オーラの同調圧力で起立を拒否していただけだったからだ。そして、どうして僕は彼女と一緒に立たなかったんだ、と思った。

 私が、右翼系・左翼系に限らず「信念を持つ人たちに懐疑的」になったのは、そんな体験があったからだ。

 国旗国歌に疑義を呈する知識人が未だにいるが、私自身は半世紀生きてきて、国旗も国歌も左右のイデオロギーを超克したものだと考えるようになった。同じ国民として、左右のイデオロギーの違いを止揚して進むための装置ではないかと思うのだ。戦後の左翼が失敗したのは、戦争責任や反戦平和の戦いに際して、国旗と国歌を保守派のシンボルと自ら敵に認定してしまったことだ。
 むしろ保守派や街宣右翼に対して、「日の丸」と「君が代」を自分たちのイデオロギーの私物にするな、という戦い方もあったろうと思う。ただ、周辺国と共闘する運動家にはそれは無理だったのだろうとは思う。

 「信念を持って抵抗している」という反論の声が聞こえてくる。
 戦時中の抵抗なら投獄や能力を覚悟しなければならないが、70年代当時も今も君が代で起立しない程度は、せいぜい「眉をひそめられる」程度のことだ。
 そんな程度の抵抗に「信念」なんてありえない。本当に信念を持っている人もいるではあろう。だが、昨今のマスコミで散見する「信念」は、その大半が「自己陶酔」にも見えるのだ。
 戦争中、愛国を叫んで、周囲を怒鳴りつけていた人たちを突き動かしたものには自己陶酔もあったろう。戦後、平和・人権・環境を叫んで周囲を怒鳴りつけてきた人たちをつき動かしているものにも自己陶酔はほの見える。

 やはり、私はひねくれているのだろうが、「信念を持つ人たちに懐疑的」である。


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作者・栗林元は小説を書いています。よろしければお読みください。(Kindle版です)
人生はボンクラ映画・西森元
1988 獣の歌/他1編・栗林元
神様の立候補/ヒーローで行こう!・栗林元
盂蘭盆会●●●参り(うらぼんえふせじまいり)他2編・栗林元

薔薇の刺青(タトゥー)/自転車の夏・栗林元
小説指南・栗林元
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by hajime_kuri | 2015-05-30 08:27 | 時事 | Comments(0)

戦争広告代理店

この本、いたるところで薦めまくったいたけど、肝心のこのBLOGでは紹介していなかったので遅ればせながら紹介。
人々の血が流される戦いが「実」の戦いとすれば、ここで描かれる戦いは「虚」の戦いである。「情報の国際化」という巨大なうねりの中で「PR」=「虚」の影響力は拡大する一方であり、その果実を得ることができる勝者と、多くを失うことになる敗者が毎日生み出されている。今、この瞬間も、国際紛争はもちろん、各国の政治の舞台で、あるいはビジネスの戦場で、その勝敗を左右する「陰の仕掛け人たち」が暗躍しているのだ。――序章「勝利の果実」より



「民族浄化(エスニッククレンジング)」というキャッチコピーの創出こそが、この宣伝戦争の勝敗を分けたといえる。そしてこれは、ボスニアを孤立させることに成功したアメリカのPR会社の力なのである。

同様のプロパガンダによる攻撃は実は日本にも向けられていて、その最たるものが「従軍慰安婦」と「南京大虐殺」である。慰安婦に関しては最近「セックス・スレイブ」というキーワードが多用されている。「スレイブ」と言えば、アメリカの歴史の恥部ともいえる「奴隷制」を想起させて、インパクトが大きいのだ。
これは、「民族浄化(エスニック・クレンジング)」の「浄化」という言葉が、西部開拓時代のネイティブアメリカンを駆逐した「北米大陸浄化」を想起させてインパクトが大きかったことに習っているのではないかと思うほど。

こういったプロパガンダのもっとも古い偽書が「シオン賢者の議定書」で、これは反ユダヤのロシア人がユダヤ人のイメージダウンのために書いたといわれている。

色々考えさせられる本である。

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by hajime_kuri | 2015-05-20 07:36 | 広告・SP | Comments(0)

BLOGを活かす

 私は2004年からこの「読書記録゛(どくしょきろぐ)」というBLOGを続けている。
 昨今ではLINEやFaceBookなどのソーシャルメディアが主流で、BLOGを書かれている人は一頃より多くはない。ただ、作家修行をしている方にとっては、BLOGは文章力を維持するためによいツールである。今回は作家修行者にとってのBLOGの活用法を書いてみたい。

 小説と同様、BLOGも読まれてこそ意味がある。そのために、心がけていることを列挙する。

・コンテンツは自分の興味・仕事・日常に関することを中心に据えると続けやすい。
 私の場合、小説を書いたり読んだりする事が好きで、作品鑑賞に関しても一家言持っているので、「書評関係」。また勤務先だった広告会社でディレクター職などもやっていたので、「広告・マーケティング・WEB関係」を話題の中心に据えた。
 ネタがつきないようにする、と同時に専門性を持たせるわけである。

・身辺雑記はほどほどにする。
 少し考えればわかることだが、アイドルでも著名人でもない、市井の一私人の身辺雑記を読みたい人がいるだろうか?

・しっかりとした記事にする
 これは私のささやかなプライドかもしれないが、自分のBLOGの書評や論評に関しては、いい加減なものは書かないようにしている。すべての記事に自分の作品への広告リンクを入れている手前、恥ずかしいものは書けないのである。
 そのかわり、気を抜かずに書いた記事はそれ自体をtwitterやFaceBookで多くの方にシェアしてもらえることが多く、本のささやかな売り上げはそれが稼いでいるといっていい。
 また、過去の記事自体がアーカイブとしていつまでもアクセスを稼いでくれる。私のこの「読書記録゛」に関して言えば、今でも毎月一番アクセスをかせいでいる記事は、2005年に書いたジョージ秋山さんのマンガ「ザ・ムーン」を紹介した記事である。

・定期的に更新する
 定期的に更新して読み応えのある記事をアップすることで、固定読者を獲得することができる。その際、更新告知をtwitterやFaceBookで行うことを忘れてはいけない。

 力あるBLOGを運用することで、自分の作品のアピールも可能になってくる。また、記事のコメントを通してご指摘や意見もいただける。
 作家修行中の方こそ、BLOGを上手に運用してほしい。


小説指南 | Cyta.jp


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by hajime_kuri | 2015-05-18 21:11 | 小説指南 | Comments(0)
 小説を書き進めていく上で避けて通れないのが、導入部における各種情報の提示だ。各種情報とは以下のようなものである。

1・主人公について。
2・舞台となる場所、季節、土地柄など。
3・この後どんな物語になるかの予感と期待。

 物語に必要な1と2を伝えつつ、さらにページを手繰りたいという動機付けの3を書く、初心者が最初につまづくのがここだ。

例)
 俺、五十七歳、男。家族は4人だ。

 このように情報を列挙するのが一番シンプルなやり方だが、読者が五十七歳の男でない限り、読者はこの一行で本を閉じてしまう。この方法が有効なのは主人公が極めて特殊な場合だけだ。

例)
 我が輩は猫である。名前はまだない。(「我が輩は猫である」夏目漱石)

 漱石は、猫という特殊な主人公に、さらに達者な語り口とユーモアを与えて楽しく読者を迎え入れているのだ。

 また、必要な情報は状況の描写とともに読ませたいものだ。

例)
 「あなたがお祖父さんの呼んだ探偵さん? 背が高いのね」(「大いなる眠り」レイモンド・チャンドラー)

 これは、主人公マーロウが依頼人スターンウッド将軍の屋敷を訪問したシーン。事件の原因となる将軍の孫娘カーメンが、マーロウを興味津々で見つめ甘えるシーンだ。それだけで、カーメンという蓮っ葉な娘の行動を描写しつつ、マーロウが異性から興味を持たれる程度のマスクと身長であることをさりげなく語っている。

 これを、

 フィリップ・マーロウは身長は高い方で、たいがいの女性は振り返ってその横顔に見とれてしまう。

 なんて説明したら、興ざめもいいところだ。でも初心者はそれをやってしまう。

 だが、ごく普通の平凡な人間を主人公にして作品を書くために、冒頭から読者の心をつかむ方法はあるのだろうか。
 その場合、いきなり何かに直面させて物語を始めると良い。

例)
 突然、前方の路面に自分とバイクの影が大きく延びた。ミラー越しにぎらぎらするヘッドライトが迫ってくる。慌ててバイクを傾けて左車線に避けると後ろから大きくクラクションを鳴らしながら、黒いベルファイアが追い抜いていった。制限速度を30キロ超えている。
 危ないことをしやがる、と思った。と、同時にアクセルを開いてフルスロットルで車を追っていた。
 これは指導が必要だ、と心の中でいいわけをした。会社員の頃なら我慢したろうが、今はもう会社員じゃない。五十七歳で再就職もできないままバイク便の請負ライダーをやっているやさぐれ者だ。失うものなどなにもないのだ。
 ベルファイアは赤信号に止められていた。運転席側の隣に並ぶと、窓からのぞき込み、「危ないじゃないか」と言った。

 状況の描写をしながら、主人公の自暴自棄な心と、主人公の諸事情を読者に伝えている。伝え終わった後、読者にとってはもう、主人公が高齢者であろうと男であろうともう関係なくなっているはずである。

 物語の導入部の情報提示は、ゲームにおける設定集や操作マニュアルと似ている。よくできたゲームは、導入部で難度の低いミッションを与えて読者に自然に操作法をマスターさせる。
 小説の導入部も同様なのである。状況や情景を読んでいるうちに自然に主人公や背景の情報を得るようにするのである。


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by hajime_kuri | 2015-05-11 11:29 | 小説指南 | Comments(0)
 今回は作品の中でやってはいけないことの話。

 シナリオなどを勉強すると習うのが「聞いたか坊主」ということ。これは歌舞伎で劇のオープニングで坊主が登場し「聞いたか聞いたか、」と噂話の形を借りて、物語のあらましを話した後、場面転換して芝居が始まることに由来している。

 つまり、複雑な人間関係や心の揺れ動き,物語の背景などめんどうなことを登場人物にしゃべらせてセリフで説明してすましてしまうことを言っている。
 昔からシナリオ教育で使われる有名な例を挙げてみよう。
 恋人同士とおぼしきカップルが、喫茶店でコーヒーを飲もうというシーン。彼らの関係を説明するためにどうするか?

 まずアマチュアの書いた会話。

 男「分かれてから2年たったよね」

 プロのシナリオライターの場合。

 女が男のカップに砂糖を入れようとして、
 「今でも二つだった?」

 この違いがわかるだろうか。「今でも二つだった?」と聞くことで、かつてつきあっていたけど、しばらく離れていたことがわかるようになっている。これが今現在つきあっているカップルなら、なにも言わずに砂糖を入れるし、初対面なら「砂糖はおいくつ」と聞かせればいい。
 つまり、極力「説明的なセリフや書かない」ということなのだ。

 以前このBLOGで、どうしても急いでストーリーを進めたいとき描写ではなく説明ですませてしまうという、若い頃の私自身の悪い癖のことを書き、「説明に逃げずに描写せよ」という教訓を自戒を込めて書いた。同様に、めんどうな説明や描写をしたくなくて、登場人物の複雑な心の動きを、セリフで語らせてしまうことがある。

 登場人物が悲しいときに、「僕は悲しいんだ」と語らせてしまうほど情けない脚本はない。小説も同様だ。考えても見てほしい。自分が本当に悲しいとき、それを言葉にして人に言ったり、叫んだりするだろうか。膝を抱えて畳の目を数えたり、賑やかな町の雑踏すら疎ましく感じるのではないだろうか。
 それを描写し語らせてほしい。

 やはり以前このBLOGで書いたが、ユーミンは、名曲「海を見ていた午後」で、別れた恋人を回想する寂寥感と懐かしさを、「寂しい」という言葉にせず、そのかわりに、窓にかざしたグラス越しに「ソーダ水の中を貨物船が通る」と描写するのである。
 これこそ小説的表現だと思う。


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by hajime_kuri | 2015-05-03 13:48 | 小説指南 | Comments(0)