「読書記録」を中心に、読んだ本、見た映画の記録、書評、ブックガイド、その他日常の徒然ね。


by hajime_kuri

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ペンネームで書いた私の作品である。
一部を抜粋。

内容紹介

 「今から録音を流します」
 手元のノートパソコンのマウスをクリックした。
 「ばかやろー!、上司を出せ!」
 静かな部屋に大音量の罵声が響きわたった。西本の両隣の二人がびくっと震えるのがわかった。当然、西本もびっくりしている。びっくりさせるための音量でもあった。
 罵声の合間に、恐縮したような「はい、はい」という相づちの声が聞こえてくる。情けない声だった。
 若い男はマウスをクリックして音声を停めた。そして西本たちを見渡すと言い放った。
 「みなさんが担当する電話は、このような電話です。この録音を聞いて、自分には無理だと感じた方は、ご遠慮なくお帰りください。無理に残られてもお互いの時間の無駄ですから」
 なるほど、これで人数を絞るのか、びくついて帰るような奴はお呼びでないと言うことなのだな、そう感じたとたん、西本の胸に「バカにしやがって」という怒りが湧いてきた。絶対に帰るものかと決めた。若い男の口調にも腹が立った。その口調の裏に「選ぶもの」の優越感を感じとったからだ。
 その時、左隣の四十男が「自分には無理だと思います」と言って立ち上がった。室内の全員に軽く会釈をすると、背を丸め、試合に負けた敗残者のように部屋を出ていった。
 ますます腹が立った。採用しないのはかまわないが、敗北感を抱かせて帰らせるなんて、どれほど上から目線なんだと思った。

 主人公・西本が二十八年勤めた東海エージェンシーを辞めたのは東日本大震災の年だった。うつ病の休職開けから三年目の春だ。
 すっかり世捨て人になった西本はハローワークで五十代求職者の厳しい現実に直面する。
 ようやくバイク便のライダーとして働き始めるのだが、そこは西本同様に心に傷を負った連中が集まっていた。
 やがて退職金も使い果たし、妻に懇願されて派遣社員として再就職に成功するのだが、そこは、メーカーの苦情電話担当という、とんでもない戦場だったのだ。
 漫画家くずれの元ライバルメーカー社員、音楽事務所社長、テレビタレントなど、奇妙な派遣相談員たちとの交流と、全国から電話をかけてくるクレーマーとの会話など、多くの出会いが西本の心を開いていく。 「うつで会社を辞めざるを得なかった」のではなく、「うつのおかげで会社を辞めるきっかけができたのだ」
 うつ病高齢者・西本のうつを抜けていく心の軌跡を、爆笑のエピソードで描いている。また、大手メーカーの苦情相談室がどのような職場かもわかる職業小説でもある。
 人生なんて「なんとかなる」、そんな気持ちでこの作品を読み終えてもらえれば、作者冥利につきる。
 ぜひ、読んでください。

薔薇の刺青(タトゥー)/自転車の夏・栗林元
小説指南
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by hajime_kuri | 2017-03-11 19:50 | 純文学 | Comments(0)