「読書記録」を中心に、読んだ本、見た映画の記録、書評、ブックガイド、その他日常の徒然ね。


by hajime_kuri

七帝柔道記

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「七帝柔道」という寝技中心の柔道に憧れ、二浪の末、北海道大学に入学した。しかし、柔道部はかつて誇った栄光から遠ざかり、大会でも最下位を続けるどん底の状態だった。他の一般学生が恋に趣味に大学生活を満喫するなか、ひたすら寝技だけをこなす毎日。偏差値だけで生きてきた頭でっかちの少年たちが、プライドをずたずたに破壊され、「強さ」という新たな世界で己の限界に挑んでいく。悩み、苦しみ、悲しみ、泣き、そして笑う。唯一の支えは、共に闘う仲間たちだった。地獄のような極限の練習に耐えながら、少年たちは少しずつ青年へと成長していく―。(Amazonより)

作者の増田氏は俺と同じ愛知県立旭丘高校の出身で親近感があるのだが、井上靖の「北の海」を読んで大学で柔道をやるってところが、またしても俺と同じじゃないですか。
俺は、柔道ではなく少林寺拳法だったのだが、恋や遊びに背を向けて、なんで武道に向かうのですか。武道に向かったのだろうか。そんな問いに答えてくれる作品だ。
この作品読みながら、「そうなんだ、そうなんだ」とつぶやいて、何度も何度も涙ぐんだ。
昭和50年代の大学体育会で武道をやってた人たちはぜひ読んでいただきたい。
七帝柔道記


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1988 獣の歌/他1編

神様の立候補/ヒーローで行こう!

盂蘭盆会●●●参り(うらぼんえふせじまいり)他2編

薔薇の刺青(タトゥー)/自転車の夏


↑ この「自転車の夏」って作品が俺の「七帝~」なんだよな。
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# by hajime_kuri | 2015-08-29 17:53 | 青春 | Comments(0)
 実際の体験を基に小説を書くと言っても、私には特に変わった体験などないし、と思う方も多かろう。だが、別に変わった体験でなくてもいいのだ。
 一番簡単なのは初めての体験だろう。ただ、勘違いしてはいけないのは、中学に入ったとか高校生になったとかの節目ではなく、「初めての気持ち」である。
 初めて「好きになった」、初めて「おびえた」、初めて「悲しかった」、初めて「うれしかった」など。

 例として、「初めて仕事で大きな失敗をした体験」で考えてみよう。
 普通の方は、いきなり自分の体験から語り出して終わってしまう。だが小説にするにはそれなりの工夫が必要だ。

 初めて部下を持った私。その部下が仕事で大きな失敗をしでかした。その時、脳裏によみがえったのは、自分が初めて失敗をしたとき、鮮やかにリカバリーをしてくれた先輩社員のAさんだった。
 こうすることで、過去の体験をきわめて客観的に描くことができる。これを上司目線で描くか部下目線で描くかは、作者の年齢で決めればいい。

 物語の締めは、部下の「ありがとうございました」言いながらも気落ちした表情に、「あの時、僕を助けてくれたA先輩への恩返しができた」と上司に言わせて、若い部下が「俺もいつかは部下を救える上司になろう」という気持ちにさせる、なんてのが典型
かな。
 助け合う気持ちを継承していく職場文化も描けて、面白いビジネスストーリーになるかも知れない。

 他にも、子供が中学に入ったきっかけに、初めて父親が嫌いになった自分の中学生時代を重ねて、当時の父親の気持ちを知る、とか。

 こういった作品のよい例に、重松清さんの作品「きよしこ」がある。ぜひお読みいただきたい。


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薔薇の刺青(タトゥー)/自転車の夏
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# by hajime_kuri | 2015-08-14 15:40 | 小説指南 | Comments(0)
 私が初めて小説を書く人にするアドバイスの一つに、「体験を基にして小説を書いてみたらいかがですか」というものがある。

 これには理由がある。作品づくりには、物語の発想と同時に、どこで起きたかの「舞台設定」、どんな行動原理の主人公かという「人物造形」、どんな事件かという「状況設定」などが発生する。さらに、登場人物の心が物語の進行に従ってどう動いて落ち着いていくか、など考えねばならないことが多い。
 しかし、自分の体験を基にした作品であれば、これらがすべてできている。あとは、どんな順番で叙述するかという「構成」と、的確に読者に伝わるかという「描写、表現」だけに集中すればいいのだ。

 このアドバイスに答えて、生徒氏が短い文章を書いてきてくれた。中学生時代の夏にどうしても受験勉強に専念できず父親を代表とする「大人」へのいらだちに苛まれていた彼が、国語の先生の言葉で初めて読書に目を開くきっかけとなったエピソードだった。
 エッセイであれば十分な文だったが、これが掌編小説になるためには、「その国語の先生がどんな人だったのか」、「その後、自分はどう変わったか」が必要だ。さらには、父親とは違う価値観を持った別の大人・国語の先生に出会った喜びや驚きの気持ちも描いてほしい。それが小説なのだ。

 自分の体験を基にした作品を書くことは、「語りに専念」する事ができる練習である。いわば空手や拳法の約束組み手のようなものなのである。


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# by hajime_kuri | 2015-08-14 15:36 | 小説指南 | Comments(0)

意識化するということ

 スポーツや武芸の修行において重要なことに「意識化」ということがある。ごく普通に行う動きをあえて意識して行うことだ。空手の型や、少林寺拳法の法形なども体の動きを意識化するためのメソッドのひとつである。
 この「意識化」は小説の執筆でも重要である。

 物語の発想の段階で、「なぜ、こんな物語や、設定を思いついたんだろう、俺」と言う点をまず意識することで、自分の心に無意識に引っかかっていた興味などが顕在化する。すると物語の想を練る時の方向が見えてきたり、調査・補完すべき知識や情報の見当がついてきて、それによってさらに想が進む。これは物語を膨らます段階で大きな助けになる。

 また、作品の執筆が始まり、物語が転がりだした後、何気なく登場させた人物や、言葉や、情景や状況も、折に触れて「意識化」すると、物語の進行につれて生きてくる。
 小説を書いていると、作家は「そうか、おまえは、ラストで主人公にこの一言を語りかけるために、あのとき俺の脳裏に浮かんできたんだな」という脇役が出てきたり、「そうか、だから、お前はあの娘の気持ちを無視したんだね」と主人公に語りかけるような経験を必ず体験する。むしろ、このような体験の積み重ねで小説は完成していく。

 作家の中には、人物造形がしっかりしていれば物語は自然に転がると豪語する方も多い。おそらく、発想から執筆に際しての「意識化」作業を「無意識」にやっているのだと思う。そこまでいけば名人クラス。小説だけで生計を立てる作家はそうなのであろう。
 武道でも、当初は意識していた動きを、有段者になると無意識に反射的にできるようになるのと同じだ。「体で覚える」と言う段階。ただ、そこに至るには、意識した練習が不可欠なのだ。

 この講座で、若い作家志望の方と話しながら、あらためて、自分が経験的に積み上げてきた「手法」や「発想法」を「言語化」することができて大いに得るところがある。これも、私自身にとっての「意識化」なのである。


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# by hajime_kuri | 2015-08-05 12:24 | 小説指南 | Comments(0)
電子書籍PRフリーペーパー「北極大陸」第九号 ダウンロード開始。
私の伝奇SF「不死の宴」は連載7回目です。

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北極第9号


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# by hajime_kuri | 2015-08-01 22:09 | 俺の作品 | Comments(0)
 先日のレッスンで生徒さんから作品の途中で文体を変えようかと思うと相談された。

 もともとライトノベルを志向されていたのだが、現在書いている物語はご本人の抱えて克服してきた悩み思いを描いている。テーマ的には重いのだがそれをコミカルに描いていこうというもの。
 本人は書きながら、あえてライトノベル的なスタイルや表現にするには無理があると感じ始めたのである。

 彼女は、ライトノベルのコンテストの一時予選通過の作品を持ってこの「小説指南」の門をたたかれたのだが、それは会話主体で進行する、シナリオのような状態だった。

 ただ、「登場人物の気持ちをセリフで語らせずに描写で描く」、「物語の進行を説明に逃げずに描写する」などの指摘で、現在書いている第二稿は見違えるほど小説になっている。また、登場人物たちが物語の進行でどのように気持ちが変わっていくかを、彼女の脳内でうっすらとした感覚でしかなかったものを意識化することで、一気に迷いがふっきれたように原稿を進めている。
 その過程で沸き上がった気持ちが、「文体や語り口をもっと自然なものに変えたい」だったのだ。

 作家として、こういうことはままあるのだ。特に小説を書き始めて間もない頃は、書きながらどんどんと描写力や表現力が付いてくる。ラストを書きながら、冒頭を読み返すと、その未熟さに自分で苦笑するぐらい上達するのである。

 彼女には、次のアドバイスを送っておいた。
 「本当に売れているライトノベルは、ライトではあってもちゃんとノベル(小説)になっている。あなたの気づきは成長の証だから信じたとおりにやりなさい」と。

 この講座で若い人たちと小説の話をしていると、小説を描き始めた若いころの自分の気持ちを追体験することができる。私自身、大いに刺激をいただいているわけだ。


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# by hajime_kuri | 2015-08-01 20:23 | 小説指南 | Comments(0)

人物造型(悪役編)

 先日のレッスンで、「悪役、敵役、嫌な奴」などがうまく作れない、うまく書けないという相談を受けた。

 作品内のどのようなキャラクターも、実際はすべて作家の心の延長線上である。
 では、どうすればいいのだろうか。

 悪役の持つ「悪」には必ず原因がある。嫌な人物の「嫌な面」にも必ず原因がある。そこから考えるのだ。

 悪になる原因の一つは「弱さ」である。スターウォーズのアナキン・スカイウォーカーがフォースの闇黒面に落ちてダース・ヴェイダー卿になってしまうのは、妻パドメを死から守ろうとしたのが原因であるってのが典型的。
 また、理想実現の為に手段を選ばずに酷薄な悪となるってのもある。

 嫌な奴の場合も、やはりその原因は、本人の弱い気持ちだったりする。
 ネガティブな、劣等感、ひけめ、妬み、嫉み、嫉妬、そんな気持ちに対する心理的防衛が、彼を嫌な奴にしているのかもしれない。

 「弱さ」も「ネガティブな感情」も、誰もが持っている感情の延長線上の気持ちである。これならば書ける。また、こういう事情を考えると、どんな悪い奴も、嫌な奴も、作者として感情移入して書けるようになる。主役や読者から憎まれる悪役も、作者だけは理解してやろうじゃないか。そうすることによって悪役の行動が、彼の行動原理では納得できるものになる。決して物語のためのご都合で動いているわけではなくなるのだ。

 さらに、エンタメの作家ならば、一歩突っ込んで魅力のある悪役を作ってほしい。そのためのキーワードが「二律背反」である。相反する要素が同居することで、悪役の人物像が深まり、陰影が増すのだ。
 具体的には次のようなこと。

 「美しいけど、醜い」
 「怖いけど、優しい」 
 「強いけど、弱い」

例)「美しい外貌と、醜い欲望」、「美しい理想を実現する酷薄で非道な手段」、「コミカルなピエロの姿の殺人者」、など。

 この二律背反こそが、作品内のドラマの重要なポイントであることが分かると思う。
 魅力的な悪役を造形できたときこそ、作品の成功は約束されるのだ。

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# by hajime_kuri | 2015-07-22 13:08 | 小説指南 | Comments(0)
私は中学生のころ読んだ五味川順平の「戦争と人間」(三一新書)を読んで、「軍部の暴走」とか「資本家の欲望」が戦争を起こしていたと思っていた。
しかし、その後歴史を学ぶにつれ、太平洋戦争の開戦は、大日本帝国の国民が望んで起きたことでもあると気づいた。

日露戦争で、辛勝した日本は、ロシアに勝ったといっても、ほとんど領土的にも資源的にも得るところところがなかった。
唯一の有色人種の列強国と言うことで、国際社会では一段と低く見られていたのである。

第一次世界大戦後でもそれは同様だ。
国際連盟で「人種差別撤廃」の提案をしても支持する国は皆無である。
開国以来の不平等条約を苦労して一つ一つ改正してきても、未だに白人列強国から冷遇され、日本国民の中には、「米英何するものぞ」といった気持ちが横溢していたのだ。
同時に開国以来、日清日露、第一次大戦と、負け知らずの経験に日本国民全体が「夜朗自大」になっていたこともある。
その国民の気分を煽りたて、購読数を競っていたのが朝日新聞をはじめとする全国紙だ。
「腰ぬけ東條、勝てる戦をなぜやらぬ」という社説すらあったのだという。
実は、この軽薄な国民感情に関しては、五味川順平の作品でもしっかりと書かれてはいたが、中学生の俺は気づかなかったのだ。

当時の政治家と軍人は、この国民感情を無視できなかったのである。
どれだけ、国民から罵倒され、命を狙われようと、戦争を回避してアメリカと交渉をするという勇気のある政治家や軍人がいたら、歴史は変わっていたかもしれない。

皮肉なことに、今回の安保法制の賛否に関して、お互いをののしりあう感情的な論争は、太平洋戦争開戦前の軽薄な国民感情を思わせる。
そして、どれだけ、国民から罵倒され、命を狙われようと、説明が下手だの、頭が悪いだのと言われても、愚直に理解を求める首相の姿は、対案も出せずに文句をつける民主党の議員たちよりずっと大人に見えてしまう。
そう感じている国民も少なくはないと思う。

※中学生の分際で三一新書を読んでいた俺はませた餓鬼だったなとは思う。

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# by hajime_kuri | 2015-07-21 23:38 | 時事 | Comments(0)
今回の安保法制問題だが、賛成派は「戦争がしたい」という論調には嫌らしいレッテル貼りの印象操作を感じる。

今回の対立は、平和という概念の「殉教者」と「リアリスト」との対立だ。

私は、理想のために、世界の安全保障で孤立するわけにはいかないと思う。

主義主張や宗教的原理主義のためなら、人の命や権利をないがしろにする国や集団に、関係ないからと言って目をつぶっていていいのだろうか。今現在、中東や中央アジアやアフリカでは、そういう状況に国連が直面している。
日本は金だけ出して知らぬ顔ができるだろうか?

日本は金を出すから、血を流すのは他の国にお任せします。だって平和憲法があるんだもーん。

これでは、他の国は許さないだろう。日本が国連にどれだけ分担金を払っても、全く発言権がないこともこれが一因ではないのか?

今回の対立は、平和という概念の「殉教者」と「リアリスト」との対立だ。「殉教者」の信仰は半世紀以上前から不変である。その半世紀前とは、国連の中国が中華民国の時代で、中華人民共和国にまだ核兵器がなく、北朝鮮にも核兵器はなかった時代だ。

半世紀も不変の「殉教者」の理想に、「リアリスト」は警鐘を鳴らしている。それが今回の対立の真実だ。

そのリアリストたちを「戦争がしたい人」と名付けるのは、まるで「慰安婦を性奴隷」、「併合を植民地支配」などと言い換えるのと同じである。

ただ、マスコミや言論の表舞台で、リアリストが、それを声に出すことに勇気が必要な言論状況には違和感を感じてしまう。
まるで、太平洋戦争開戦前の新聞報道が、「米英何するものぞ、腰ぬけ東條、勝てる戦をなぜやらぬ」という開戦一色に染まり、平和を訴えることができないという状況を、反転したようではないか。
自分たちの「平和信仰」以外は聞く耳を持たない。これこそ原理主義ではないだろうか。

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# by hajime_kuri | 2015-07-18 22:39 | 時事 | Comments(0)
 物語内でのキャラクター(登場人物)の違いをどう描くのか、という質問をいただいた。今までも「会話の描写」などで少し触れたが、物語における各キャラクターの造形などについて考えてみよう。

 マンガの場合は、下手な作家でもキャラの違いをまず外見で出すことができる。髪の色、髪型(アホ毛を立てるとかね)など、日本のマンガではキャラ自体が多分に記号的であるからだ。

 だが小説の場合はもっと「根本的」なところでキャラ造形をしておかねばならない。それは、いろいろな物語内の状況(シチュエーション)でそのキャラクターがどう感じ、どう判断して、どう行動に移すかという「行動原理」を固めることである。
 これがしっかりと作家の中で把握できていれば、行動もセリフもそのキャラにふさわしいものが自ずと出てくる。先ほど記号的といったマンガでさえ、キャラたちの行動原理はきっちりと決まっているはずだ。

 多作なプロの作家には、この「行動原理」のキャラクター造形がしっかりできていれば、物語は自然に転がっていくと豪語される方もいる。
 逆に書き慣れていない新人作家は、ストーリーを転がすために、主人公の行動原理に反するようなことをさせてしまうこともある。その、場合、読者は、何だかご都合主義で物語が進んでいく印象を受けてしまう。
 慣れてくると自分で違和感を感じて再考できるようになってくる。コーチしている生徒さんの中には、既にそのレベルの方もいて、自分で「このシーンはないと思うわ」と、きっちり自然なストーリー展開に直してくる。

 ただ、登場人物の行動原理が物語を通して変化することは当然ある。彼らも物語内で成長するからだ。むしろその成長こそが物語の中のドラマになるのである。それだけに、その視点を欠いた作品は浅いものになる。

 この登場人物の成長自体が物語の中心をなす作品もある。それが成長物語(ビルドゥングスロマン)と呼ばれるものである.


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# by hajime_kuri | 2015-07-15 17:18 | 小説指南 | Comments(0)

物語には「緩急」が必要

 ここ数日、二人の生徒さんのレッスンで同じ指摘をした。

 まず一人目。活劇シーンに入ってから、駆け足で物語が続くのだが、大量に人が死んでいき、読者の心に「また死ぬの?」といった「慣れ」が生じてしまう。
 書き手の心理としては、手を緩めては読者がつまらなく感じないだろうか?アクションをたたみかけたい、という気持ちかと思う。

 次の生徒さんは、物語の第二章に入り、第一章で登場した人物たちの背負った「業」が少しずつ、キャラクター達や読者に共有されていく話を描写の中で語っていく章である。
 静かな章で、書いていて、読者はつまらなくないだろうかと書き手として不安になった、と言うことなのだ。

 お二人とも書き慣れていないからこそ起きる不安である。
 物語には「緩急」が必要なのだ。跳躍するためには、まずかがまねばならない。
 最初の生徒さんは不安から「急」だけになり、二人目の生徒さんは「緩」を書いていることに不安になったわけだ。

 「緩」のシーンは、物語の中では次のドラマティックな展開に必ず必要な展開である。二人目の生徒さんは、準備稿の段階で「緩」の章にあった暴力シーンを削ってきた。これは、とってつけたようなシーンだったので、もし残っていたら私が指摘しようかなと思っていたのだが、ご自身で「必要ないシーンとしか思えなくなった」と削ってきたのだ。
 よくぞ気づいた、生徒君。

 実際に小説を書いていくと、この語りの「緩急」がわかってくる。
 物語は、読者を「誘い、じらし、満足させる」の繰り返しで転がしていく。
 「緩急」の「緩」とは、まさにこの「じらし」に他ならない。この「じらし」の間に、より「サプライズ」させるための仕掛けをしたりするわけだ。

 ただ、読者を「じらす」ように書いている時は、作者もやっぱりじれている。早く次を書きたくて仕方ないわけである。


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# by hajime_kuri | 2015-07-11 23:01 | 小説指南 | Comments(0)
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# by hajime_kuri | 2015-07-01 01:03 | 小説指南 | Comments(0)