人気ブログランキング | 話題のタグを見る

「読書記録」を中心に、読んだ本、見た映画の記録、書評、ブックガイド、その他日常の徒然ね。


by hajime_kuri

親父の目にも涙、「野菊の如き君なりき」 (1955)木下恵介

何がどう膨らむというわけでもないのだが。にトラバ。
民子と政夫のいとこ同志のあいだに芽ばえた恋は、世間を気にするおとなたちのためにへだてられ、民子は政夫の面影を胸に秘めて嫁いでいきます。
いわずと知れた伊藤左千夫の「野菊の墓」のモノクロ映画化である。
実は、俺は映画や文学など割と冷笑的(よく言えば客観的ってか)に鑑賞する嫌な奴であるが、いったい誰に似たんだろうと思うと、それは実の父である。もともと彼は高校の国語教師ですからそれも当然でしょうな。
で俺が高校2年生、生意気盛りで映画にのめりこみ始め、スクリーンやロードショーではなくキネマ旬報や映画芸術を読み始めた頃のことである。
テレビで、「野菊の如き君なりき」を放映したのだ。日曜日の午後である。
親父は「懐かしいなあ」と言っていたのだが、映画も後半に差し掛かったとき、ふと見ると泣いているではないか。親父の涙を見たのは後にも先にもこの一回だけである。
高校生のガキには古臭いだけでピンとこなかったんだが、親父は初上映の頃、まだ独身で、周囲はまだまだ戦後の復興の最中だったとのこと。淡い初恋とかを真正面から描いた映画は初めてだったのだよな、と少し言いわけしとりました。親父、ちょうど今の俺の年齢と一緒であった。
俺も、こういう作品にぐっとくる年齢になったのかもしれないなあと思う次第である。

野菊の如き君なりき←アマゾンへGo!
野菊の墓新潮文庫←アマゾンへGo!
by hajime_kuri | 2004-11-15 11:35 | 映画