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「読書記録」を中心に、読んだ本、見た映画の記録、書評、ブックガイド、その他日常の徒然ね。


by hajime_kuri

描写と説明

 小説の中身は、情景や行動の「描写」と、舞台背景や世界観などの「説明」で成り立っている。
 描写により、状況や心理や光景などが生き生きと描かれる。シナリオ作法でまず教わるのが、「描写で説明せよ」ということで、よく例に挙げられるのが喫茶店でカップルがコーヒーを飲むシーン。

何も言わずに、相手のカップに角砂糖を入れてあげる場合は、現在交際中。
「砂糖はおいくつ?」と聞いた場合は初対面。
「三つだったっけ?」と、聞いた場合は、久しぶりに再会した二人。
といった具合に、地の文で、彼女との関係をあえて説明しなくてもいいのだ、と教わるのである。

 しかし、全編を描写だけで描くことは不可能だ。説明や解説でてきぱきと進めなければならない場合もある。企業小説などでの解説や、歴史小説での時代背景の説明は、不可欠の要素である。
 また、説明や解説を多用することで、感情を廃した乾いた独特のムードを生み出すことができる。
 例として、小林恭二氏の「ゼウスガーデン衰亡史」がある。これは下高井戸オリンピック遊技場といううらぶれた遊園地が、天才的な経営手腕でゼウスガーデンという巨大アトラクションパークとして人間の欲望と快楽を吸収していく歴史を、ローマ帝国衰亡史のような歴史書スタイルで描いたもので、全編が説明である。
 また、大藪春彦氏の作品における「銃」「車」「猟」に関する説明は、それ自体が作品の魅力の一部になっている。
 描写で描くべき部分と説明ですますべき部分。描写でなければならない部分と、説明でなければならない部分。その匙加減を「体得」するのも、小説を書く技術なのである。


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by hajime_kuri | 2014-07-14 22:47 | 小説指南