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「読書記録」を中心に、読んだ本、見た映画の記録、書評、ブックガイド、その他日常の徒然ね。


by hajime_kuri

「OUT」(桐野 夏生)講談社文庫

「OUT」(桐野 夏生)講談社文庫_a0003784_104712.jpg 先日、映画版を見たので読み返した。で、結論として、映画版は見なくてよい(笑)。また映画だけ見た人は、必ず原作を読んで欲しい。映画だけで判断しては、桐野女史が気の毒だから。

 パートタイマーの主婦雅子はパート仲間が殺してしまった暴力亭主の死体を処理するはめになる。それをきっかけに、彼女たちの平穏な日常が、崩れていく。
 それでも、その「平穏な日常」を嫌悪していた主人公は、その中でたくましさをましていくのである。すごい。作者が女性であるからこそ紬出せた物語であろう。
 読後感は重い、しかし、カタルシスがある。雅子の強さ、「男まさり」のようなかっこよさはなく、ちゃんと「女性の強さ」ならではのかっこよさである。俺と同様、この主人公の強さに喝采を送った読者も多いのではないか。

 昔、「単調で貧しい日常に倦み疲れた独身労働者(つまりは俺のような)」のカタルシスは「大藪春彦」の小説だった。暴力を背景にのさばる連中を、それを上回る暴力で倒していく大藪小説。
 「OUT」を読んで、これは「平穏な日常に倦み疲れた女性」のための小説なのだと思った。桐野夏生は女達のための大藪春彦になったのである(←少し暴論・笑)。
OUT 上 講談社文庫 き 32-3←アマゾンへGO!
by hajime_kuri | 2004-03-15 10:48 | ミステリ