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「読書記録」を中心に、読んだ本、見た映画の記録、書評、ブックガイド、その他日常の徒然ね。


by hajime_kuri

「黒死館殺人事件」小栗虫太郎(青空文庫)

青空文庫からダウンロードして、iPhone3Gで文庫リーダー「豊平文庫」を利用して読了した。
この作品、かなりの長さで、実は昭和53年のハヤカワミステリを持っているのだが、あまりの難渋さに放り投げていた作品である。
新仮名遣いの青空文庫で読了したわけで、青空工作員の方とiPhoneには感謝感激である。
物語の内容の9割はペダントリイ(衒学)である。

「ペダントリイ(衒学)とは何ですか?」
「ペダントリイ(衒学)という言葉を使いたがることです」

という冗談があるほどで、文字通り、学問をひけらかして人を煙に巻くことである。
この作品では、これが舞台のムードつくりに利用されているのである。
どんな具合かと言うと、
「君がそう感じるのは、僻みだよ」と言えばよいところを、「君がそのような感を抱くのは、ニーチェが論じるところのルサンチマンが成せる技だよ」などということで、そういえば落語の「無学者」の中には、「今日は風が強くて、目に砂が入ってしまった」と言うところを、「今朝(こんちょう)は、怒風(どふう)烈しゅうして小砂眼入(しょうしゃがんにゅう)す」というところが出てきたなあと、今、思い出した。

そんな具合で、探偵・法水倫太郎が、得々と沙翁(シェークスピア)を引用している間にも殺人が起きてしまうわけで、まあ一度読んでみていただきたい奇書である。面白いよ。

この調子で、今度は夢野久作の「ドグラ・マグラ」をダウンロードしたところである。

黒死館殺人事件

日本探偵小説全集〈6〉小栗虫太郎集 (創元推理文庫)

黒死館殺人事件 (まんがで読破)


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作者・栗林元は小説を書いています。よろしければお読みください。(Kindle版です)

1988 獣の歌/他1編・栗林元

神様の立候補/ヒーローで行こう!・栗林元

盂蘭盆会●●●参り(うらぼんえふせじまいり)他2編・栗林元

薔薇の刺青(タトゥー)/自転車の夏・栗林元
by hajime_kuri | 2009-12-17 10:39 | ミステリ